「KOTARO NUKAGA」が、東京・六本木のピラミデビルに新たなスペースをオープン!こけら落としとして、日本で3年ぶりとなる松山智一の個展「Boom Bye Bye Pain」を開催

展示風景

現代アートギャラリー「KOTARO NUKAGA」は、東京・品川区天王洲にある「TERRADA Art Complex」内に続き、2拠点目となる新スペース「KOTARO NUKAGA(六本木)」を、2021年5月22日(土)に、東京・港区六本木のピラミデビル内にオープン! それを記念して、ギャラリーディレクターである額賀古太郎氏と、現代美術家の松山智一氏の対談形式によるプレス発表会が、5月18日(火)に開催されました。

左より松山智一氏、額賀古太郎氏

KOTARO NUKAGAは、これまでポストモダンを代表する田窪恭治氏や、松山氏、平子雄一氏などの新進的な現代アーティストを紹介。また、ステファン・ブルッゲマン氏やニール・ホッド氏など、国際的に評価を受けながらも日本国内では未発表だった海外アーティストを積極的に取り上げてきました。異なる視座を持ち、幅広い表現方法を用いて作品を制作する国内外のアーティストの作品を展示することで、現代アートの多様性や領域横断性、その枠組み自体について考えをめぐらせてきたといいます。また、アーティストが企画するグループ展やギャラリー独自の視点でキュレーションされた展覧会を積極的に開催し、政治や現代の社会構造、装飾性や自然、身体などをテーマに、社会や人間の活動とアートの関係性について考察してきました。

額賀氏は、今回六本木にギャラリーをオープンするにあたった経緯として、次のように述べています。

六本木は海外からの文化も入ってきて、また美術館もあるなど、現代アートを多くの方々に鑑賞していただける素晴らしいエリア。コロナの影響で、アートの世界でも様々なプログラムが中止や延期になるなど、大変な1年だった。そのような状況下でギャラリーを継続できるかどうか考えた。アーティストは、コロナ禍でも決して活動を止めない。大変な状況でも、現代アートに触れて新しい時代を作っていくことが必要だと考えた。様々な文化が交差し、常に新しい情報が発信されている六本木で、アーティストたちに活動の場を提供したいという思いから、新たなスペースの開設に踏み切った

加えて、「アーティストは歴史や社会を描写しつつ、未来を予兆させてくれる存在で、鑑賞者が作品に関わることで、新しい価値や未来を生み出すことが現代アートの意義」だとアートの重要性を解説。

新スペースのこけら落としは、松山智一氏の日本では3年ぶりとなる個展「Boom Bye Bye Pain」で、2021年5月22日(土)から7月10日(土)まで開催されます。

新スペース「KOTARO NUKAGA(六本木)」での展示風景

松山氏は、1976年生まれの岐阜県出身で、現在、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト。ペインティングを中心に、彫刻やインスタレーションも手掛けています。作品には、東洋と西洋、古代と現代、具象と抽象といった両極の要素が見られ、これは日本とアメリカの両国で育った松山氏自身の経験や、情報化の中で移ろいゆく現代社会が反映されています。2020年、JR新宿駅東口広場のアートスペースを監修し、中心に7mの巨大彫刻を制作。また上海の美術館では大規模な展覧会を成功させるなど、その活動が国内外から注目されています。2021年にはNHK「日曜美術館」で特集が組まれ、グローバルな活動と重層的な制作が高く評価されている、今話題のアーティストです。

「Boom Bye Bye Pain」という展覧会タイトルは、1992年にリリースされてヒットしたBuju Bantonのポップレゲエソング「Boom Bye Bye」と「Pain」という2曲のタイトルを松山氏が融合したものです。銃撃音を表す「Boom」と、それから連想される「Bye Bye」を掛け合わせるブラックミュージック特有のスラングは、アフリカ系アメリカ人たちがゲイの人々に発した差別的なメッセージという意味も孕んでおり、発表当時は物議を醸しました。巨大都市に生きるマイノリティが、自己肯定のために別のマイノリティを否定するという構造は、松山自身が人種差別を受けながらもアメリカ社会の中でアーティストとして活動するなかで逃れることの出来ない環境であり、それこそが痛み「Pain」を感じつつも生を実感させる現実でした。

松山氏は同展に寄せて、次のように語っています。

建国当初から不平等で成り立っているアメリカで、いまでも自分の不平等とどう立ち向かっていくか、なぜ自分が存在しているのかという闘いの渦中で活動を続けている。自分の存在を正当化しないと生きられない社会背景がある。NYで生き抜くことは毎日がエクストリームで、コロナに憂いているより、ここでやりたいこと、できることがあると考えた。モノを作ることでしか、アーティストは呼吸できない。アートという非言語的なコミュニケーションで、自身の中に存在する2つのアイデンティティを表現したい。また、情報過多の現在、何がリアリティなのかを捉えたい

また、「アートがある場所には文化が生まれ、人が集う場所になる。アーティストが別の形に変換して提示することで、日常がいつもと違って人々の目に映ることが重要で、それこそがアーティストの役割」とアートの社会的意義を力説。

新型コロナウイルス感染症が広がる状況を鑑みて「世界的な危機的状況下にあるからこそ、いかに前向きなメッセージを日本で発信できるかを考えて、今回の個展のタイトルに至った」と個展に込めた想いを明かしました。

本展を代表する作品となる≪Spiracles No Surprises≫は、馬に乗る人物が旗を持ち、もう1人が行く先を示す、松山氏の代表的なモチーフである騎馬像のシリーズです。歴史的に、強者や支配者の象徴として描かれてきた騎馬像を、鮮やかな色彩と古今東西の装飾柄や抽象的な表現で描くことにより、松山氏は時代を超えて繰り返し描かれてきたそのモチーフに込められた権威性を解体し、そこに新たな意味を与えます。騎乗する2名を取り囲む、非現実的で浮遊感のある世界観は、様々な文化が融合し、膨大な情報の中で現代社会を生きる私たちの脳裏にふとよぎる、「我々は何者で、どこに向かうのか」という問いを暗示するかのようです。NYという多様な文化的伝統が存在する民族混合地域で自身のアイデンティティの問題と常に向き合う松山氏は、マイノリティだからこそ見える視点と「私たち」という主語で鮮やかに社会を切り取ります。それは、松山氏が自身の経験を通して解釈するリアルな多文化主義を、力強いビジュアルで軽やかに作品化する行為といえるでしょう。

大作を含む約15点の新作を発表する本展は、「どのような環境に置かれても生き残っていかなければならない、人間の根源的な営みと向き合いながら制作に取り組んできた」と語る松山氏にとって、創作すること、すなわち生きることの意味を改めて問いかける展覧会となります。額賀氏は「世界的な危機的状況下でも、アーティストが果たすべき使命・信念に基づいて活動している松山さんの展覧会を行うことで、より良い世の中を作っていきたい」としています。ぜひ、作品の世界観を体感しに、会場に足を運んでみてください。

展示風景Tomokazu Matsuyama, Blind Critical Mass, 2021Tomokazu Matsuyama, Blind Critical Mass, 2021Tomokazu Matsuyama, Blind Critical Mass, 2021Tomokazu Matsuyama, River To The Bank, 2020Tomokazu Matsuyama, Spiracles No Surprises, 2021

 

開催概要
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■松山智一「Boom Bye Bye Pain」
会 期:2021年5月22日(土)~7月10日(土)
会 場:KOTARO NUKAGA
時 間:11:00~18:00
休 廊:日月祝
*国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。
 

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