「編集」で切り取る日本の近現代美術史百年ー「百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-」

「編集」が切り取る日本の近現代美術史百年ー「百年の編み手たち	-流動する日本の近現代美術-」

3年にわたる休館を経て、2019年3月29日にリニューアルオープンした東京都現代美術館。3月29日(金)から6月16日(日)まで、企画展示室3フロア全てを使った大規模な企画展「百年の編み手たち -流動する日本の近現代美術-」が開かれています。

リニューアルロゴ

 

1.はじめに

「百年の編み手たち ー流動する日本の近現代美術ー」展は、同館が収蔵するコレクションを核に、1910年代から現在にいたる日本の美術史を「編集的な視点で新旧の表現を捉えて独自の創作を展開した編み手である作家たちの実践」*とし、再考する試みです。

同展が、「編集」が織りなす「百年」の起点とするのは1914年。第一次世界大戦の開戦でヨーロッパからの情報流入が乏しくなったこの年を、「新しいものの学習の段階から、編集へと展開したはじまりの年」**と考えているからです。

大正、昭和、平成をまたぐ百年間、「編み手たち」は、その時々の課題と向き合うだけでなく、日本の美術はどうあるべきか、その在り様をめぐって批評的に制作を重ねてきました。

「百年の編み手たち ー流動する日本の近現代美術ー」展からみえてくる日本の近現代美術史とは一体どんなものでしょうか。
 

*引用元:「百年の編み手たち | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO」 https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/weavers-of-worlds/ 、2019年6月16日アクセス
**引用元:「百年の編み手たち 流動する日本の近現代美術」(展覧会図録)、東京都現代美術館、2019年

 

 

2.見どころ

1)展覧会のキーワードは「編集」


 「百年の編み手たち ー流動する日本の近現代美術ー」は「編集」をキーワードに14章で構成されています。

展覧会で取り上げられている作家たちに共通してみられるのは、新旧様々な表現方法やテクニックを意識的に組み合わせ、対峙する社会の現実を投影しながら独自の創作を展開する姿勢です。

多様な要素を取捨選択しながら結びつける手法はまさに「編集」的。

情報過多な近年の状況に生きるものとして、日々周辺の情報、現象を選択して切り結び、自分を取り巻く社会を把握するために「編集」のような行為を無意識に行っています。それだけに、会場に展示されている作家たちが「何」を選んで「何」と組み合わせ、自分自身が生きる社会の「何」を捉えて表現しようとしたのかに目を向ける切り口は非常に興味深いです。

ただの時系列でもオーソドックスな美術史の体系に依るものでもなく、改めて日本の近現代美術の歩みを捉え直す今回の試みは、新しく「令和」の時代を迎えた今だからこそ、より意義深いのではないでしょうか。

百年の編み手「13章 仮置きの絵画」で展示されている梅津庸一の《智・感・情・A》。13章では、絵画は壁に飾られるものという固定概念から離れ、襖絵や屏風絵のような仮設性・移動性を伴った作品が一堂に会しています

 

2)充実の資料で日本の近代美術の流れがよりリアルに


「百年の編み手たち    -流動する日本の近現代美術-」展で展示されるのは作品だけではありません。館内にある美術図書室所蔵の創作版画誌や特別文庫、加えて展覧会の目録や雑誌、パンフレット、葉書等も会場に並んでいます。作品だけではなく、これらの資料がともに展示されることで、芸術思潮の移り変わりがよくわかるだけでなく「編み手」たちの息遣いをより身近に感じることが出来ます。


 

3.「百年の編み手たち ー流動する日本の近現代美術ー」を楽しんだあとは


1)コレクション展「MOTコレクション 第一期ただいま/はじめまして」
MOTコレクション展第一期「ただいま/はじめまして」
 コレクション展示室1・3階と屋外展示場にてコレクション展も開催されています。休館前から収蔵されていた約5000点の中から戦後美術を中心とする「ただいま」の展示。そして、休館中に新しく収蔵した2010年以降の作品の「はじめまして」の展示がテーマに沿って紹介されています。
 
充実したコレクションを自分のペースで楽しめる内容なので、東京都現代美術館に来たら、是非ご覧ください。

Nadegata Instant Party (中崎透+山城大督+野田智子)《カントリー・ロード・ショー》(2012)マーク・マンダース《Dry Figure on Chair(椅子の上の乾いた像)》(2011-15)修復後初のお目見えとなる宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》(1998)


2)ミュージアムショップ NADiff contemporary
 
展覧会図録だけでなく様々な書籍、アーティストによる商品が並んでいます。見ているだけでも楽しいけれど、見ていたら欲しくなる…。必見です。

ミュージアムショップ NADiff contemporary


3)食事
東京都現代美術館の中にはレストラン「100本のスプーン」とカフェ&ラウンジ「二階のサンドイッチ」があります。可愛い名前ですよね。雰囲気もとってもおしゃれ。展覧会を楽しんでお腹が空いたときはぜひ!

 

4.展覧会基本情報

■「百年の編み手たち    -流動する日本の近現代美術-」

会    期:2019年3月29日(金)~2019年6月16日(日)
会    場:東京都現代美術館 
時 間:10:00〜18:00
*展示室入場は閉館の30分前まで
休 館:月曜日(2019/4/29、5/6は開館)。5/7、6/17-7/11は臨時休館。
入 館 料:一般 1,300(1,040)円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 900(720)円 / 中高生 600(480)円 / 小学生以下 無料
*( )内は20名以上の団体料金
*企画展のチケットでコレクション展もご覧いただけます

〈展示作家〉
靉嘔、会田誠、靉光、秋山祐徳太子、朝倉摂、阿部展也、有島生馬、池田龍雄、石井柏亭、石田尚志、泉太郎、磯辺行久、伊藤存、梅沢和木、梅津庸一、梅原龍三郎、漆原英子、瑛九、大岩オスカール、大竹伸朗、大野俶嵩、岡﨑乾二郎、岡本太郎、小倉遊亀、小沢剛、落合多武、オノ・ヨーコ、オノサトトシノブ、恩地孝四郎、風間サチコ、柏原えつとむ、桂ゆき、加藤泉、加藤太郎、金山明、金氏徹平、鹿子木孟郎、川俣正、河原温、神原泰、岸田劉生、北川民次、北代省三、木村荘八、工藤哲巳、国吉康雄、小泉明郎、河野通勢、小林正人、駒井哲郎、斎藤義重、斎藤与里、篠原有司男、清水登之、白髪一雄、白川昌生、末永史尚、菅木志雄、杉戸洋、杉全直、杉本博司、住谷磐根、諏訪直樹、清宮彬、髙柳恵里、多田美波、辰野登恵子、田中敦子、田中功起、田中千鶴子、千葉正也、椿貞雄、鶴岡政男、手塚愛子、寺田政明、照屋勇賢、東郷青児、堂本尚郎、冨井大裕、豊嶋康子、中澤弘光、中西夏之、中野淳、中ハシ克シゲ、中原實、中村一美、中村宏、奈良美智、名和晃平、野田哲也、浜田知明、深沢索一、福沢一郎、福島秀子、福田美蘭、藤田嗣治、藤牧義夫、舟越桂、ホンマタカシ、前田藤四郎、牧野虎雄、松江泰治、松本竣介、丸山直文、三木富雄、三島喜美代、南川史門、村上隆、村山知義、毛利悠子、元永定正、森千裕、森村泰昌、八木良太、柳幸典、柳瀬正夢、ヤノベケンジ、矢部友衛、山口勝弘、指差し作業員、横尾忠則、横堀角次郎、𠮷田博、吉原治良、Chim↑Pom、O JUNほか

 

■「MOTコレクション 第一期ただいま/はじめまして」

会    期:2019年3月29日(金)~6月16日(日)
会    場:東京都現代美術館 コレクション展示室 1F、3F
時 間:10:00〜18:00
*展示室入場は閉館の30分前まで
休 館:月曜日(2019/4/29、5/6は開館)。5/7、6/17-7/11は臨時休館。
入 館 料:一般 500円(400円)/大学生・専門学校生 400円(320円)/高校生・65歳以上 250円(200円)/中学生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金

〈展示作家〉
今井俊介、荻野僚介、奥村雄樹、オノ・ヨーコ、さかぎしよしおう、末永史尚、鈴木昭男、関根直子、五月女哲平、髙田安規子・政子、棚田康司、手塚愛子、寺内曜子、中園孔二、Nadegata Instant Party (中崎透+山城大督+野田智子)、文谷有佳里、南川史門、宮島達男、アンソニー・カロ、リチャード・ディーコン、サイモン・フジワラ、サレ・フセイン、ヂョン・ヨンドゥ、ロイ・リキテンスタイン、マーク・マンダース、マルタ・パン、ソピアップ・ピッチ、アルナルド・ポモドーロほか

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