ストライプインターナショナル石川康晴。岡山のパトロンが描く「瀬戸内アートリージョン」とは。アートと地域とビジネスの関係性 | ARTS ECONOMICS 06

ストライプインターナショナル石川康晴。岡山のパトロンが描く「瀬戸内アートリージョン」とは。アートと地域とビジネスの関係性 | ARTS ECONOMICS 06_2

連載「ARTS ECONOMICS(アーツエコノミクス)」はARTLOGUEが提唱する文化芸術を中心とした新しい経済圏である ARTS ECONOMICS の担い手や、支援者などの活動を紹介する企画です。
アーティストや文化芸術従事者のみならず、ビジネスパーソン、政治家など幅広く紹介し、様々に展開されている ARTS ECONOMICS 活動を点ではなく面として見せることでムーブメントを創出します。
 

 ARTS ECONOMICS バックナンバー 

第一回 アートは ”人間のあたりまえの営み” マネックス 松本大が語るアートの価値とは…

第二回 リーディング美術館の提言をしたのは私だ。参議院議員 二之湯武史の描くビジョンとは

第三回 生粋のアートラバー議員 上田光夫の進める街づくり、国づくりとは

第四回 チームラボ 猪子寿之。アートは生存戦略。人間は遺伝子レベルで最も遠い花を愛でたことで滅ばなかった。

第五回 スマイルズ遠山正道。アートはビジネスではないが、ビジネスはアートに似ている。「誰もが生産の連続の中に生きている」の意味するもの。


 

アートが身近にある地域に育つ
 

大原美術館(写真提供:大原美術館)


鈴木:石川社長とアートとの出会いを教えてください。

石川:私は岡山県出身で、倉敷にある大原美術館に幼少の頃からよく行っていました。近代美術のコレクションが素晴らしい美術館で、そこがアートとの出会いです。

鈴木:幼少の頃から近代美術ですか。

石川:クロード・モネ(Claude Monet, 1840~1926)とかパブロ・ピカソ(Pablo Picasso, 1881~1973)といった近代美術からアートに入っていきました。その後、瀬戸内海の直島でアートプロジェクトが始まったのが1990年代ですが、毎月のように訪問していた時期もあったので、かなりの回数直島に行っていると思います。

 草間彌生「赤かぼちゃ」2006年 直島・宮浦港緑地 写真/青地 大輔

なので、10代は大原美術館、20代頃から直島。23歳で起業してからは、買い付けでヨーロッパやアメリカに行くことが多かったので、ロンドンのテート・ギャラリー、パリのポンピドゥー・センター、ニューヨークのメトロポリタンミュージアムやMoMAなどによく行きました。そこでコンセプチュアル・アートに対する目が鍛えられましたね。

鈴木:何かきっかけがあったというよりは、岡山に生まれたから自然にアートに興味を持つようになったということですか。

石川:そうですね。大原美術館は小学校の視察コースになっていたり、家族や友だちとイベントを見に行ったりしていました。絵を見たいというよりは、クラシックな美術館に興味があったという方が強かったかもしれないです

直島に関してもアートを見たいというよりは、開発のプロセスがすごく面白くて注目して見ていました。ですから、アート自体を見始めたのは起業してからですね。

 

現存して、活動している作家をコレクションする
 

石川康晴社長(取材時撮影)

鈴木:コレクションについて聞かせてください。

石川:基本的に現在活動している作家の作品をコレクションするというのがコンセプトで、約300作品所有しています。

鈴木:ライアン・ガンダー(Ryan Gander, 1976~)などコンセプチュアルなものが多いですね。

石川:考え方が好きなんです。例えば、ポール・マッカーシー(Paul McCarthy, 1945~)。レセプションにある彼の作品《こどもの教育のための解剖人形》とか、内臓がさらけ出されてインパクトがあるんですが、基本的にはパッと見て美しいと感じるものでなくても、作家の考え方や作品の哲学というものを感じることができたらコレクションするというのがポリシーなんですよ。 

レセプションにあるポール・マッカーシー作品

鈴木:この作品をレセプションに置いた理由を教えてください。

石川:クリエイティビティが必要な業界に僕も含めて社員は所属していますから、他とは違うレセプションの方がいいんじゃないかなと。

鈴木:よりインパクトのある作品を置こうということでしょうか。

石川:あのような作品を普段から見ていると、他者と異なる視点を持つことができるようになると思っています。

鈴木:社員教育の一環にもなっているんですね。

石川:そうですね。当社には美術館巡りをしたりするアート部みたいなものがあって、10月にも佐賀県武雄市の「チームラボ かみさまがすまう森」を見学に行きました。本社内にも多くのアートを展示していますが、アートに興味がある人もない人もいるので基本的には自由に見てもらうようにしています。アートは時間がかかるので、5年、10年かかって何かを掴んでもらえればいいと思っていて、強要はしないです。

 

素晴らしいものを継続させるという、パトロンの役割
 

Exhibition view of teamLab: A Forest Where Gods Live – earth music&ecology, 2018, Takeo Hot Springs, Kyushu, Japan  © teamLab teamLab is represented by Pace Gallery 

鈴木:「チームラボ かみさまがすまう森」にスポンサードしていますよね。猪子寿之さん(いのこ としゆき、1977~)がとても感謝していました。

石川:世界から注目される素晴らしいプロジェクトを支えることもパトロンの役割ですよね。チームラボは世界トップクラスのデジタルアート集団だと思います。

石川文化振興財団では、コンセプチュアル・アートに特化していますが、ストライプインターナショナルではアートのエントリー層向けにチームラボなど幅広いクリエーターを支援しています。

Ryan Gander 《Two hundred and sixty-one degrees below every kind of zero》 2016 ©Ryan Gander, Courtesy of TARO NASU, Photo:S.U.P.C uchida shinichiroDan Graham 《Wood Grid Crossing Two-way Mirror》 2010 ©Dan Graham, Courtesy of Taka Ishii Gallery, Photo:S.U.P.C uchida shinichiroLawrence Weiner 《BLOCKS OF COMPRESSED GRAPHITE  SET IN SUCH A MANNER  AS TO INTERFERE  WITH THE FLOW OF NEUTRONS  FROM PLACE TO PLACE》 2017 ©Lawrence Weiner, Courtesy of TARO NASU, Photo:S.U.P.C uchida shinichiroDanh Vo 《We The People (detail)》 2011 ©Dahn Vo, Courtesy of Galerie Chantal Crousel, Photo:S.U.P.C uchida shinichiroLiam Gillick 《Faceted Development》 2016 ©Okayama Art Summit 2016, Courtesy of the artist and TARO NASU, Photo: Yasushi IchikawaPeter Fischli David Weiss 《How to Work Better》 1991 ©Okayama Art Summit 2016, Courtesy of the artists and Galerie Eva Presenhuber, Photo: Yasushi Ichikawa
「岡山芸術交流2019」プレイベントとして開催されている「A&C」での展示風景

鈴木:好きな作家の傾向などはありますか。

石川:コレクションしている作家はみんな好きですが、岡山芸術交流2019のアーティスティックディレクターでもあるピエール・ユイグ(Pierre Huyghe, 1962~ )、フランスを拠点とするフィリップ・パレーノ(Philippe Parreno, 1964~)。イギリス出身のライアン・ガンダー、リアム・ギリック(Liam Gillick, 1964~)。アジア生まれだとヤン・ヴォー(Danh Vo, 1991~)、日本人だとミカ・タジマ(1975~)という作家に注目しています。

鈴木:海外の芸術祭などを見に行かれて、購入を検討しているのでしょうか。

石川:世界中の美術館で企画展をしている作家の作品も見ますし、イタリアのヴェニス・ビエンナーレ、ドイツのドクメンタやミュンスター彫刻プロジェクトといった海外の芸術祭も見に行きます。

 

ほかでやっていないことをやろう―2回目の開催を控える岡山芸術交流2019
 

アンジェラ・ブロック《環境と開発に関するリオ宣言 -持続可能な開発の27の原則》2016 ©岡山芸術交流実行委員会 写真:市川靖史

鈴木:ピエール・ユイグは「ミュンスター彫刻プロジェクト 2017」にも出していましたが、そちらを見られて2019年の「岡山芸術交流」のアーティスティックディレクターにオファーしたのですか。

石川:いえ、ピエール・ユイグはもっと前から決めていました。
岡山芸術交流の始まりはもう少し前で、2014年に、岡山城をはじめとした市内各所で前身となるアートプロジェクト「Imagineering(イマジニアリング)」をやったんです。そこではライアン・ガンダーだとか、スイスのペーター・フィッシュリ(Peter Fischli, 1952~)ダヴィッド・ヴァイス(David Weiss, 1946~2012)など、12作家の20作品を展示しました。

そこに多くのお客様が来られたので、2016年に第1回目の岡山芸術交流を開催して、今回は第2回となる岡山芸術交流2019。その流れの中でピエール・ユイグが芸術監督、アーティスティックディレクターに就任しました。

ライアン・ガンダー《編集は高くつくので》2016 ステンレススチール、瓦礫 ©岡山芸術交流実行委員会 写真:市川靖史

鈴木:第1回岡山芸術交流拝見しました。すごくコンセプチュアルで、しかもどっしりした作品が多くて、一般的な芸術祭に比べて見ごたえがありました。作家選びにはどういった意図があるのでしょうか。

石川:どういった作家を選ぶかは、そのときのアーティスティックディレクターに一任しています。ある意味難解な、一見してわかりづらいと感じられるようなコンセプチュアルアートが多かったかもしれません。ほかでやっていないことをやろうという考えがあるので、同じ現代アートでも福武財団の瀬戸内国際芸術祭ともまた違った印象で楽しんでいただけるのではないかと思います。

 

瀬戸内アートリージョン構想
 

石川康晴社長(取材時撮影)

鈴木:福武財団というと、瀬戸内のアートの大パトロン、大原孫三郎氏、福武總一郎氏の意思を継いでいるということですか。

石川:そうですね。大原さんが私財を投げうって倉敷を開発されて、福武さんは直島や瀬戸内海を開発されてきたので、僕たちは先輩の渡してくれたバトンを受けとめて岡山をより一層活性化しようとしているわけです。

この規模の小さな地域に文化や芸術の支援者が3人いるというのは、世界的にも珍しいかもしれませんね。

そのバトンを今後継いでくれる、IPOをした社長とかが出てくるといいですね。 

​  石川社長が実行委員会会長を務める「OKAYAMA AWARD(オカヤマアワード)」は、岡山の経済や文化の向上を促すとともに、岡山の活性化を目指して創設され、2010年以来岡山で活躍する多彩な若手経営者等を毎年顕彰している。  ​

鈴木:石川社長の出現まで、「瀬戸内国際芸術祭」などでも岡山県の存在感は薄かったと思いますが。

石川:行政や議員の方々に芸術について理解してもらうことはなかなか難しい面もあります。岡山のようにある程度人口があって観光地などもあると、何か新しいことを始めないとこのままではまずいという危機感が薄くなってしまうのかもしれません。

ただ僕の場合、岡山の大森雅夫市長(1954~)が理解者ですし、瀬戸内がどんどん変わっていく様子を多くの岡山の人たちが見てきたというのも追い風になっているかもしれないですね。

鈴木:大原さん、福武さんから続く流れを継いでいるということですよね。

石川:そうですね。福武さんとは電話で月に1回ぐらいやり取りしますし、大原美術館理事長の大原あかねさんとも定期的にやり取りをしています。

大原、福武、石川と連携しながら「瀬戸内アートリージョン」というものを作り上げて、岡山や香川だけではなくて「瀬戸内」という言葉を、世界に発信していけたらいいなと思っています。

日本を訪れた人が、古い歴史は京都や姫路で見て、新しい文化を岡山、もしくは瀬戸内で見る。その新旧のコントラストの部分も含めて楽しんでほしい。

そういったことが世界に伝われば、「東京と岡山」とか、「京都と岡山」とか、「福岡と岡山」とか、そういう組み合わせで岡山を滞在先として選んでもらえるのではないかと。

「アートがインバウンドの力になる」と言うと大げさかもしれないですが、僕たちはそれを信じ、地域に交流人口を増やすために、アートを通じて世界に届くような活動をしていきたいと思っています。

同時に、地域に住んでいる子どもたちや若い人たちが早い時期からアートに触れられて、想像力豊かな子どもたちがいっぱい育つ地域にしていきたい。

地元では特に子どもたちの想像力を育みつつ、同時に世界から岡山や瀬戸内をめがけてくる人を増やしたい。そんな思いがありますね。

 

ホテルにミュージアム。世界に向けた新たなアートプロジェクト
 

​  「食」を起点に岡山の地域活性化に取り組む「ストライプマルシェ」の様子  ​

鈴木:アートトリップに来る方は、だいたい東京に入って、京都に行って、金沢か瀬戸内という流れになってきていますが、岡山が注目され始めるとすごいですね。

石川:金沢は新幹線で東京からすぐですし、食の文化も温泉の文化もある。近いうえに食と温泉があって、さらにアートのハブとなる場所もあるわけです。

一方で岡山は、東京からは新幹線で3時間半かかりますし、21世紀美術館に対抗するようなミュージアムもありません。食の文化は負けないぐらいあるんですが十分に伝わっているとは言えません。さらに金沢も同じですが、宿泊施設が少ないというのも旅行する人のストレスだと思うんですよね。

 ですから、今、石川文化振興財団で「A&A」という宿泊施設のプロジェクトに取り組んでいます。A&AのAはアーティスト、もうひとつのAはアーキテクト、建築家ですね。

現代美術の作家と建築家がタッグを組んでデザインした宿泊施設を岡山市街地に20棟建てる計画で、そのうちの2棟が2019年の岡山芸術交流の頃にはお披露目できる予定です。

アーティストと建築家が作った宿泊施設が2棟あって、「岡山芸術交流」で世界的に著名なアーティストの作品が各所に展示される。さらに新鮮な魚介類を活かした美味しいお寿司屋やイタリアンを楽しんでいただく。これからは食とアートというのが、岡山を盛り上げるブランディングのひとつになっていくのではないかと思っています。

鈴木:最近、宿泊施設とアートを組合せた活動が増えてきてます。愛媛・道後温泉の「道後オンセナート」や京都の「ホテル アンテルーム 京都」などがあったり、若い人が宿泊費の一部をアーティストに還元するという試みをやっていたりしていますね。

石川:僕たちはアートが好きな人たちに喜んでいただき、岡山に滞在してもらいたいと考えています。

鈴木:素晴らしいですね。一方で一昨年、岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校跡地活用事業の公募型プロポーザルに美術館創設計画で応募されました。残念ながら落選されましたが、やはり美術館運営への思いは強いのでしょうか。

石川:ミュージアムはやっていきたいですね。現在もいくつか建設用の土地の交渉はしていて、決まれば5年以内ぐらいに建てたいと思っているんですけどね。

一昨年応募した土地は、県立美術館と市立オリエント美術館が隣接していて、新たに美術館を創設して3棟並ぶという構想だったのですが、残念ながら山陽放送の本社移転に決定しました。

鈴木:これからも挑戦されるのでしょうか。

石川:そうですね。前回の物件ほどではないですが岡山でまた大きい区画の提案が来ていますし、いい土地に巡りあえれば、コレクションを展示したり企画展を行ったりするようなミュージアムは作りたいですね。

 

アート業界に革新的なフレックスタイムを
 

​  ストライプインターナショナルのオフィスの中心にある「未来を妄想する」ための部屋、「未来妄想室」  ​

鈴木:少し話は変わりますが、アート業界の労働環境は「やりがい搾取」のような酷い状況と言われています。一方、ストライプインターナショナルでは残業削減などを実践されていますが、どうしたらアート業界も労働環境の改善に向けた取り組みが進むと思われますか。

石川:あまりアート業界を労務という観点で見たことがないので、正直わからないですね。ただ、アパレル業界も労働環境が悪いと以前から言われていて、我々もベンチャー企業として立ち上げて10年目から15年目の頃は、業績がいい一方で労働環境は悪かったんです。

ここ6年ぐらいで一気にホワイト企業に向かっていって、平均残業自体も1か月に8時間まで削減できました。経済産業省から健康経営優良法人「ホワイト500」に認定されたり、厚生労働省からもいろいろな賞をいただいています。

もしアート業界の労働環境が悪いということであれば、リーダーがコミットメントしない限り環境は良くなっていかないのではないかと思います。

鈴木:アート業界では、特に芸術祭や美術館というのは予算ありきにもかかわらず、どうしても予算オーバーのプログラムになります。そのしわ寄せが残業などのブラックな要素になっていると言われています。

石川:理想的には、トヨタを上回るようなフレックスタイムをやればいいのではないかと思いますね。

オフィス内にあるカフェ/バースペース

鈴木:トヨタを上回るようなと言いますと。

石川:芸術祭とか企画展で一時的に長時間労働になってしまう時期があったとしても、それが終わったら1週間休めるとか、1ヶ月まるまる休むとか、週のうち2日しか出勤しないとか、そういうメリハリが大事だと思うんですよね。

欧米的かもしれないですけども、やる時はやる、休む時には1ヶ月ぐらい休むみたいな、そういうフレックスタイムのもっと極端な仕組みが専門的な業界には向いているのではないかなと。

そういうルールを誰かが提供していけばいいと思いますね。

鈴木:それはいいですね。ただ、アートはプロジェクトごとに動いて、それが終わるとすぐに解散することが多いので、しっかり常勤化していく必要があるわけですね。

石川:難しいところではあると思います。そういった例はよく見てきましたからね。
 


「いい支援者がいれば、いいアートが日本に残る」
 

鈴木:ARTLOGUEでは「ARTS ECONOMICS(アーツエコノミクス)」という、文化芸術を中心とした新しい経済圏を提唱しているのですが、アートが経済に及ぼす可能性について石川社長の考えを聞かせてください。

石川:アートはいい支援者がいてこそ羽ばたけると思いますが、日本もいよいよそういった現代アートのパトロンを意識する人が増えてきたように思うんですよね。
いわゆる日本の高所得層や大きな企業の経営者といった人もアート収集などを通して現代アートに向き合っていますし、若手経営者の間でも、たとえばZOZOの前澤友作さん(1975~)も非常に意識が高く、GMOインターネットの熊谷正寿さん(1963~)も現代アート作品をコレクションしている。他にもアイスタイルの吉松徹郎さん(1972~)は現代アートをサポートする財団を作っていますし、オイシックスの高島宏平さん(1973~)も現代アートを応援し始めています。

大なり小なり、現代アートを応援してお金を使おうという人たちが今までになく増えてきている社会に突入しているわけです。「いい支援者がいれば、いいアートが日本に残る」というのが僕の考え方で、いいアーティストがいても、いい支援者がいないとそのアーティストは他の国に買われてしまう。日本の現代アートの質を上げるためには、支援する人の質を上げるということが大事ではないかなと思いますね。

 

日本のアート、瀬戸内のアートの可能性
 

石川康晴社長(取材時撮影)

鈴木:パトロン文化を育てていくこともそうですが、今後、日本のアート業界を持続可能なものにしていくためにはどういったものが必要ですか。

石川:「1%クラブ(ワンパーセントクラブ)」もそうですけど、純利益なり営業利益の数%をメセナやCSRといった活動に充てようという企業が増えてきてますよね。その矛先はもちろんアートだけでなくて、農業支援とか職人支援でもいいと思います。

そうした活動に経営者が価値を見出して、投資家から見ても、そういった会社こそが株式市場において持続、継続性を持っている会社だと評価される。結果として、その会社の株価が上がっていくようなことが起きてくれば、必然的に文化だとかCSRというところにお金が回りだす社会になるのではないかなと思っています。

いまはCSR銘柄みたいなものの株価が少し上がる傾向にありますが、メセナを応援していくことも同じ文脈なので、投資家の目線としてはいい傾向にあると思っています。

鈴木:最後に、石川社長自身が今度アート業界においてやりたいことを教えてください。

石川:繰り返しになりますが、自分たちのゴールというのは瀬戸内アートリージョンです。アートを軸として瀬戸内海エリアの活性化を目指し、地方創生につなげていきたい。アートの力を借りて岡山を世界に発信したいんです。岡山だけでなく、周辺の地域の活動とともに世界に打ちだせる強いコンテンツを作っていきたい。瀬戸内ブランド、瀬戸内アートリージョンというものを世界に広めていく役割を担って、棺桶に入るギリギリまで走り続けていきたいなというのが、僕の考えですね。

(了)
 

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