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イチジクは「羞恥」の象徴?エデンの園の甘美な果実

イチジクは「羞恥」の象徴?エデンの園の甘美な果実
ジョヴァンナ・ガルツォーニ《China Bowl with Figs, a Bird, and Cherries》、1651年~1662年頃、羊皮紙に水彩、26×38cm、イタリア、フィレンツェ・パラティーナ美術館蔵
Giovanna Garzoni [Public domain], via Wikimedia Commons


イタリア南部で、レモンの木とともに多く見られるのがイチジクの木です。

庭に植えられているだけではなく、道端や畑の隅にも自然に生えるがまま、イチジクの木が葉を茂らせていることもしばしば。枝を広げて大きく成長するイチジク、夏には人々にほっと涼める木陰を提供しています。収穫の時期が長いのも特徴で、6月ごろから9月まで夏の味覚として愛されています。

生活に寄り添い親しまれてきたイチジクは、絵画作品にもよく登場します。例えば、宗教画を数多く残したヤコポ・リゴッツィ(Jacopo Ligozzi)。博物学者ウリッセ・アルドロヴァンディ(Ulisse Aldrovandi)の影響で、イチジクを含む自然の事物もたくさん描きました。

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さてこのイチジク、「羞恥」の象徴として描かれることも。一体なぜでしょうか。


アダムとイブの裸を隠したイチジクの葉

 

作者不詳《Codex Aemilianensis》、994年、スペイン、ミニアチュール、エル・エスコリアル修道院所蔵 By Anonymous [Public domain], via Wikimedia Commons

作者不詳《Codex Aemilianensis》、994年、スペイン、ミニアチュール、エル・エスコリアル修道院蔵
By Anonymous [Public domain], via Wikimedia Commons

創世記の中で、蛇にそそのかされて「禁断の果実」を食べたアダムとイブが、自分たちの「裸」を恥ずかしく思うようになる。そんなシーンをご存知の方も多いでしょう。

その後、エデンの園と呼ばれる楽園を追放されるアダムとイブですが、裸を恥じてその身を覆ったのが「イチジクの葉」

地中海世界のイチジクは大木が多く、それに応じて日本で見かけるイチジクに比べて葉も非常に大きくなります。このエピソードがきっかけで、イチジクは「羞恥」のシンボルとなっていきました。


「禁断の果実」はリンゴではなくイチジク?

ミケランジェロ・ブオナローティ《楽園追放》、1509年から1510年、フレスコ画、280×570cm、バチカン、システィーナ礼拝堂天井画 Michelangelo [Public domain], via Wikimedia Commons

ミケランジェロ・ブオナローティ《楽園追放》、1509年から1510年、フレスコ画、280×570cm、バチカン、システィーナ礼拝堂天井画
Michelangelo [Public domain], via Wikimedia Commons

創世記に登場する「禁断の果実」と聞いて、どんな果物が頭に浮かぶでしょうか。

たいていは、「リンゴ」が頭に浮かびます。

じつは、聖書の中では「リンゴ」とは明記されていません。そのため、地中海の人々は、アダムとイブが口にしたのも「イチジクの実」と考えていたようです。恥じて裸身を覆った葉がイチジクであったのですから、食べたのもその実と思っても不思議ではありません。

もちろん、リンゴの木が身近にあるドイツやイギリスの画家たちは、エデンの園にリンゴの実を描いています。

しかし、地中海世界の人々にとってはより近しい存在であるイチジクが、「禁断の果実」にふさわしい甘美な果物だと思っていたのでしょう。


地中海式食事法には欠かせなかったイチジク

古代ギリシアの人々は、甘い食材としてイチジクとハチミツをことのほか愛していました。パン、ワイン、ブドウ、豆類、オリーブオイルとともに、イチジクも古代から地中海の食卓の中心にあったのです。

古代ローマの逸話の中には、政治家が演説を行う際に聴衆を説得するためにイチジクを用いたというものまであります。

エデンの園にある果物であったことから、「原罪」のシンボルとしてイチジクはよく登場します。ざらざらとした皮の下には柔らかく乳のような豊かな果実を隠しているため、神学者によっては「キリスト教そのもの」と表現した人もいます。

さらに、その豊かな甘さは、17世紀以降に流行した静物画でも大活躍。ジョヴァンニ・ガルツォーニをはじめ、メディチ家の屋敷を飾るため、バルトロメーオ・ビンビもイチジクの作品を残しています。とにかく豊かに実をつけるイチジクは、豊饒のシンボルとしても人々に愛されていたのです。

バルトロメーオ・ビンビ《Figs》、1696年、カンヴァスに油彩、イタリア、メディチ家ポッジョ・ア・カイアーノ山荘所蔵 Bartolomeo Bimbi [Public domain], via Wikimedia Commons

バルトロメーオ・ビンビ《Figs》、1696年、カンヴァスに油彩、イタリア、メディチ家ポッジョ・ア・カイアーノ山荘蔵
Bartolomeo Bimbi [Public domain], via Wikimedia Commons



宗教画に描かれたイチジク

創世記だけではなく、旧約聖書のイザヤ書にも「イチジクで作った塗り薬」で傷を癒すという記述があります。

聖書にたびたび登場するためか、イチジクは実だけではなく樹木も宗教画に描かれています。

例えばアンドレア・マンテーニャ(Andrea Mantegna, 1431~1506)が描いた《聖セバスティアヌスの殉教》

柱に縛り付けられ矢で射られた聖セバスティアヌスの足元にイチジクの木が。兵士の守護成人として知られる聖セバスティアヌスはペストからも守ってくれると信じられ、中世に人気を博しました。

以降もたびたび絵画をはじめとする芸術作品に登場しています。ちなみに三島由紀夫が聖セバスティアヌスに扮した写真を篠山紀信が撮影しています。

Andrea Mantegna [Public domain], via Wikimedia Commons

アンドレア・マンテーニャ《聖セバスティアヌスの殉教》(1480年頃、テンペラ画、255×140cm、フランス、ルーヴル美術館所蔵) Andrea Mantegna [Public domain], via Wikimedia Commons

またジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini, 1430~1516)が茨の冠をかぶせられたキリストを描いた《Christ crowned with Thorns》には、キリストの後方に細いイチジクの木が描かれています。

ジョヴァンニ・ベッリーニ《Christ crowned with Thorns》、1515年、カンヴァスに油彩、103×64cm、スウェーデン国立美術館所蔵 Giovanni Bellini [Public domain], via Wikimedia Commons

ジョヴァンニ・ベッリーニ《Christ crowned with Thorns》(1515年、カンヴァスに油彩、103×64cm、スウェーデン国立美術館蔵) Giovanni Bellini [Public domain], via Wikimedia Commons


ローマではイチジクをピッツァと食べるのが伝統的

夏になると、「メロンと生ハム」「洋ナシとチーズ」といった甘×辛の組み合わせが好まれるようになります。

ローマでは伝統的に、ピッツァとイチジクの組み合わせをよく見かけます。これにさらに、生ハムを乗せても、夏らしくさっぱりとした味です。一度お試しください。

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