ミュージック・レーダー:脳内無限ループが止まらない!スーパーオーガニズムがカヴァーした宇多田ヒカル『パクチーの唄』
「ミュージック・レーダー」シリーズでは、アートなセンスが光る国内外の「キテる」ミュージシャンやグループをいち早くキャッチしてご紹介します。
宇多田ヒカルのオリジナル以上!? スーパーオーガニズム『パクチーの唄』
かれこれ3週間アタマの中で「ぱくぱく」鳴っているのが、スーパーオーガニズム(Superorganism)がカヴァーした、宇多田ヒカルの「パクチーの唄」。アルバム『初恋』のプロモーション用にオファーされて制作されたものです。一度聴いたら耳に居座り続けるので、閲覧注意!
個人的には、2016年の前作『Fantôme』が宇多田ヒカルの最高傑作だと固く信じていたので、収録曲のYouTubeのタイアップ映像をチェックしてはどこか冷めた目で見ていました。そんな中、アルバム発売前日の6月26日に公開されたのが「パクチーの唄」(Superorganism Rework)。まさかのスーパーオーガニズムを持ってくるとは!ずっとフォローしている天才ドラマー、クリス・デイヴのレコーディングでの起用に続き、宇多田の音楽センスにはやっぱり脱帽するしかないです。
オリジナル曲のミュージックビデオはないので、アルバムを買った人にしか比較できないでしょうが、原曲とはまったく違うアレンジと雰囲気。はっきり言うと、オリジナルより全然いい!この夏の甘酸っぱい感覚は、初期のくるりの音楽を思い出しました。しかも偶然にも同じ日には、くるりの新曲「忘れないように」のMVが公開されています。この曲、くるりの原点に立ち返ったようなストレートさが感じられて、とてもいいんですね〜。
YouTubeには、宇多田ヒカルが監修した「パクチーノ」というオリジナルドリンクのレシピ動画もあります。パクチー好きの方は、試してみてはいかがでしょう。実はタイ人はそんなにパクチー食べないんですが…。
スーパーオーガニズムのボーカルは18歳の日本人オロノ
スーパーオーガニズムは、2017年に結成された8人編成の多国籍インディー・ポップ・ユニット。ボーカルの18歳(2018年6月時点)の日本人女性オロノ(本名:野口オロノ)ほか、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、韓国からインターネットを通じて集まったメンバーで構成されています。昨年高校を卒業したオロノを含め、グループの内の7人のメンバーは、ロンドンにある一軒家で共同生活を送りながら音楽制作を続けています。宇多田ヒカルは、ふてくされたような態度でクールに歌うオロノの早熟な感性に、かつての自分を見たのかも。
オロノさんは2015年の夏休みに、留学先のアメリカの高校から日本に帰国した際に、スーパーオーガニズムの前のバンドのライヴを見に行って意気投合。やがて、彼女がSoundCloudにアップしていた音源を聞いたメンバーからインターネットを経由して、「Something For Your M.I.N.D.」という曲の歌詞とボーカルを依頼されます。
この曲が、アメリカの音楽シーンを代表する一人、R&Bシンガーのフランク・オーシャンにピックアップされるなど、各種のメディアで取り上げられ一気にブレイク。わたしもそうでしたが、「Something for your mind」というリフレインに取り憑かれてしまう人が続出します。グループはBBCが選ぶ期待の新人アーティストリスト「Sound Of 2018」にも選出され、今年3月にはデビューアルバム『Superorganism』を発表しました。
全員が母国以外の外国暮らしの経験を持つスーパーオーガニズムの音楽には、アウトサイダー的な傍観者としての視点が存在しています。メンバーが、アンダーグラウンド・コミックの第一人者ロバート・クラム(ロバート・クラムに興味のある方は「アンディ・ウォーホルのスーパースターニコも。ロマンと狂気と死。ドキュメンタリーの衝撃に打たれる」をどうぞ)からの影響を挙げるのにも納得できます。白か黒かのボーダーを引かずに曖昧なままのリアリティを受け入れる。現実がどうあれ、世界をハッピーにするために音楽を届けるスーパーオーガニズムの未来に期待しましょう。
BBCの依頼を受けてオロノが、きゃりーぱみゅぱみゅにインタビューした記事がおもしろかったので、よければコチラからどうぞ。
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