食は “五感” で楽しむ時代へ 〜 アジアのベストレストラン50のTOPに輝く、Gaggan(inバンコク)の世界~
こんにちは!
「おいしい旅」をデザインする、株式会社 Table a Cloth トラベルデザイナーの岡田奈穂子と申します。
旅の楽しみに欠かせない食。世界の食シーンは日々変化しています。
中でも近年注目されてきているのが、スペイン・バスク地方より拡がってきた、五感すべてを使って味わう料理のスタイル。
味覚のみならず、視覚、嗅覚、聴覚、触覚… そのすべてを取り入れ提供されるコース料理は、さながら一連のショーを鑑賞しているような感覚に。
今回は、Asia’s 50 Best RestaurantsでNo.1に輝き続けるバンコクのインド料理レストラン「Gaggan(ガガン)」から、その最新の食事体験をお伝えします。
世界の食シーンを変えたスペインの名店中の名店、エルブジ出身のシェフが繰り出すインディアンフュージョン料理の世界。
創造力で作られた、アーティスティックな食体験へご案内いたします。
私自身が世界を旅して見つけた「アートと食のおいしい関係」をご紹介できたらと思います。
セレンディピティ!特別席でまさかのディナー
2018年 2月某日
ずっと来たかったけれど、来ることは叶わないかもしれないと思っていた場所。
バンコク中心の路地中にある、一軒家の邸宅レストラン「Gaggan」。
予約は6ヶ月待ちともいうので、よく予約が取れたものだなぁと感心しながら。
といっても、飛行機を取るよりずっと先に予約を入れました。
その中でたった14席、リクエストを出してもほとんどの人が通らないカウンター席が2階にあり。
通常の厨房は1階にあるけれど、この14席だけは前が実験室のような厨房になっていて、同じメニューをショー形式で楽しめるという。
もちろん私もリクエストを出していたけれど、そんなすごい倍率にひっかかるわけもなく、2階の通常のテーブル席に案内されたのですが…。
なんと、とてもラッキーなことに、最近シンガポールから来たという日本人のソムリエさんがいらっしゃって。
ダメ元で、やっぱりあっちは無理ですよね、と言ってみると、交渉してくださったのかなんとなんと、カウンター席にお招きいただけることに…!!!
大慌てで席を移動します。
なんと言ってもここは、18:00一斉スタートの遅刻は大厳禁、アレルギーも基本は無しの方限定という本当の特別席だから。
置かれたメニューにはなんと、25個のアイコンが書かれているのみ。
???となりながら、この空間専属というフランス人ソムリエさんにワインペアリングをお願いすることに。
It's show time !
シャンパーニュとともに、いよいよ始まりです。
小さなお皿が25個、コース仕立てで。
22個は手でそのまま、2個は器で、1つは内緒ねそのうちわかるから、と。
まずは小さなアペタイザーが2品。
こちらはエルブジの系譜を組む「Gaggan」のシグニチャーディッシュで、
ぷちっとハリのある食感の、ヨーグルトリキッドの入った温泉卵みたいな一皿。
触覚を味わう1品が早速登場。
そして間も無く、空間内に急に大音量のロックミュージックが!
Lick it up! という歌詞とともにこのお皿。
チリとカレーとグリーンピースのペーストを下からLick it(なめて)、脳内カレーを楽しんでと。
面白いーーーー!大のおとながみんなお皿を舐めちゃっています...!!!
これは紛れもなく、聴覚を活用した遊び心あふれる1品。
始まって15分もしないうちに、Gagganワールドに圧倒されてしまいます。
この後も驚きの品々が続きますが…
どのお皿も余韻がとてもとても長いことに気づきます。なんだか魔法みたい。
10皿目で突如、根室の立派な箱ウニが披露され…!!!
その後、前の厨房で仕立てられたのは、タコスに見立てた生雲丹。
下には、パンプキンと鱈、海ぶどうのムースが隠れていて。合わせて頂くの。絶品…!!!
なんと芸術的で細やかな仕事でしょう。
視覚で楽しむお料理の最高峰を見せていただいた気がします。
同様に次に披露されたのは、なんと大分産の鮪…!!!
鮪の中トロマリネ、シャリはご飯ではなく出汁のメレンゲ。
マリネは、フリーズドライの柚子と山葵が香リます。
「Gaggan」のシェフはとても日本が好きで、1年で8〜10回も来日しては食材との出会いを楽しんでいるとか。
和の食材の新しい可能性が、こんなふうに海外でもたらされるなんて。
13皿目の「Citrus(シトラス)」マークの出番では、
どちらかの手を出して、とシェフから急に柚子のリキッドをスプレーされ、ここに載せられたのがフォアグラと柚子アイスのミニタルト。
放たれる香りと、舌からの味わいが絶妙に絡む、複雑な味に舌鼓。
早々と最後のひとつになっていた、嗅覚がここで発揮されます。
と言っても、お料理はまだここで半分。
お楽しみは続きます。
21皿目の「King Crab(キングクラブ)」では、
急に照明が暗くなり…目の前で焼かれるのは、シェアウッドという木の破片。
火がついたままお皿に提供され、気をつけてとバナナリーフの中から出て来たのは…
な、なんと!!! 「蟹のバスマティライス」
おいしくて、楽しくて。一生この世界から抜けたくないほどにうっとり。
SWEEEEEEEETS!!
そして始まるデザートの一皿目。
「Rose(ローズ)」のアイコンで登場したのは、ビーツで作られた薔薇の花びら。
2皿目は、「Flower Power(フラワーパワー)」。
花型のパイ生地に載るのは、苺アイスと裏に潜むラベンダーシュガー。
折り紙よりインスパイアされたその名も「Origami(オリガミ)」では、塩キャラメル、味噌キャラメル、ラズベリー、チョコレートのソースがそれぞれのセクションに。
最後の一皿は、エスプレッソ珈琲と白胡麻のキャラメルアイス。
そして配られる、食材の答え合わせ。
完璧すぎるショータイムの幕引き。
「楽しませたい!」という気持ちのなんて強い人たちなのだろう。
感性に裏打ちされた発想で型を破り、新たな視点をくれる。
そんな可能性を秘めているところが、食とアートの共通点なのかなと感じながら。
美味なる「鑑賞」体験
アイデアとも、創造力ともいう。
普段の食事ではそこまで必要じゃないと思えるようなことが、ここでは当然のように前面に立ち、笑顔を生んでいます。
五感に訴えるお料理の数々。
楽しいからそのぶん、味覚だけに重点を置いた料理よりおいしくなくても仕方ないかな、なんて正直思っていたところもあったのですが、ここ「Gaggan」で頂いたものは、どれもほんとうに味わい良く、そこに更にエンターテイメント性が加わるという極上の体験でした。
もしもこういったスタイルのお料理が、もっと身近で楽しめるようになったら。
アイデアひとつで、限りある食材から実に多彩なお料理が生まれ、その一皿、一皿に、土地に息づく文化や土地柄が盛り込まれている。
美術鑑賞さながら、創造力に感性が刺激されて未知の文化に出会える、そんな空間を求めて、たくさんの人が訪れてくれるかもしれません。
「おいしい旅」のトラベルデザイナーでもある私の夢は、食文化を通じて文化の違いの面白さを伝えることです。
今回の「Gaggan」での食事体験を通して感じたのは、ただ土地のおいしいものを提供するだけではなく、そこに創造性が加わることによって、魅力や想いが数倍の力を持って伝えられるということ。そして、それらを楽しみながら続けることにより、伝えたい相手の方からわざわざ手を伸ばし、足を運んでもらえることへの可能性。
心の片隅で輝き続けるような、大切な気づきを頂きました。
ご馳走様でした。
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今回訪れたお店はこちら。
◆Gaggan
http://eatatgaggan.com/
心がふるえるような、『おいしい旅』のプランニングなら。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
◆株式会社 Table a Cloth
http://tableacloth.com/
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