アートフェアって何するところ? 「アート・ステージ・ジャカルタ 2016」 レポート

Seina Morisako

Seina Morisako

アートフェアって何するところ? 「アート・ステージ・ジャカルタ 2016」 レポート

今年初めての開催となるアート・ステージ・ジャカルタ。ブラックのポスターがシックな装い。 インドネシアのジャカルタで「アート・ステージ・ジャカルタ 2016 (Art Stage Jakarta 2016)」が、8月5日から7日までジャカルタ市内のシェラトングランド・ジャカルタ・ガンダリアシティーホテル(the Sheraton Grand Jakarta Gandaria City Hotel)にて開催されました。今回は、この始めて開催されたアートフェアをレポートします。

ヒジャブ(イスラム教の女性が着用する頭髪を隠すスカーフのような布)を着こなす女性たち。 
ヒジャブ(イスラム教の女性が着用する頭髪を隠すスカーフのような布)を着こなす女性たち。 
 

インドネシアという国

今回、「アート・ステージ・ジャカルタ」が開催された場所はインドネシアの首都、ジャカルタです。インドネシアは面積約189万平方キロメートル、日本全体の国土の約5倍もの広さです。 人口は2015年、インドネシア政府統計で約2.55億人といわれています。大半がマレー系の人たちです。約88%の人がイスラム教を信仰しますが、その他ヒンドゥー教、キリスト教を信仰する人もいます。 経済成長率は2010年から約5%前後を維持しています。国民総所得も順調に伸びており、成長が見込まれるアジアの市場の中でも、特に成長を期待できる国の1つです。
内覧会でのテープカットイベント。銅鑼がアジアらしさを演出する。
内覧会でのテープカットイベント。銅鑼がアジアらしさを演出する。
 

アートフェアではなにが行われているのか

では、アートフェアでは一体なにが行われているのでしょうか。 アートフェアとは、一言で言えば「芸術の販売会」です。さまざまなアート・ギャラリーが一同に集まり、作品を展示販売しています。作品の販売だけでなく、アーティストにとっては新作発表の場、アート業界人にとってはアート市場の動向を探る情報交換の場、一般客にとっては新しい作品の鑑賞の場として、多角的な側面をもっています。 そして、国際的なアートフェアの特徴として、開催国のアーティストを世界にアピールする舞台という役割もあります。 国際アートフェアは、別の地域に姉妹フェアとして開催される場合もあります。 今回開催された「アート・ステージ・ジャカルタ」は「アート・ステージ・シンガポール」の姉妹イベントとして初めて開催されたフェアになります。 開催責任者のロレンツォ・ルドルフ氏は「インドネシアのアートは非常にユニークなものが多いが、世界的に知られていない作家も多いです。よって、このフェアは全ての訪問者にとってユニークなものになるでしょう。」とインタビューでコメントしています。
今回は会場がホテルということもあり、フェア終了後はプールサイドでのパーティーがありました。とても華やかでしたが、社交の場としては混みすぎたていたのが残念でした。 
今回は会場がホテルということもあり、フェア終了後はプールサイドでのパーティーがありました。とても華やかでしたが、社交の場としては混みすぎたていたのが残念でした。 
 
プールパーティーには華やかな演出が数多く行われていました。しかし参加者は参加者同士の交流に忙しかったようです。パーティーは深夜まで続きました。
プールパーティーには華やかな演出が数多く行われていました。しかし参加者は参加者同士の交流に忙しかったようです。パーティーは深夜まで続きました。
そして、アートフェアの営業時間終了後はパーティーが行われます。ここでギャラリストやコレクターは情報交換を行い、その後に綿密な商談が行われていくのです。
アートフェア会場に隣接されたホテルには数々のアート作品が。これはホテルオーナーのコレクションだそうです。 
アートフェア会場に隣接されたホテルには数々のアート作品が。これはホテルオーナーのコレクションだそうです。 
 

アジアのトップコレクター

今回のアートフェアは、ホテルのコンベンションセンターを利用して開催されましたが、隣接しているショッピングモールにも様々なアート作品がありました。 実は、こちらは今回のアートフェアのプロモーションに置いたのではなく、ビルのオーナーの常設コレクションなのです。作家のラインナップとしては、世界的に有名な作家から日本の作家、そしてインドネシアを代表する作家まで様々なコレクションが展示されていました。このようにインドネシアを始め、アジアには想像を絶するような質と量のコレクションを所有するコレクターが存在します。彼らは自分の美術館を持ち、一般に解放してくれている人もいます。
アートフェアを気持ちよく楽しむにはまず場所の把握から。 
アートフェアを気持ちよく楽しむにはまず場所の把握から。 
 
フェアが行われた入口には大きなアート作品が数多く展示されていました。セキュリティは目立った感じではいらっしゃらなったです。
フェアが行われた入口には大きなアート作品が数多く展示されていました。セキュリティは目立った感じではいらっしゃらなったです。
 

アートフェアの楽しみかた

では、アートフェアを楽しむにはどのようにしたらいいのでしょう?それは、「気に入った作品を何度も見る」から始めてみることをお勧めします。そのためにはアートフェアの全体像の把握は必須です。 今回のアート・ステージ・ジャカルタの特徴として「魅力的な作品が見やすい規模で展示されていた」ことが挙げられます。合計49のギャラリーが参加しました。この数は多すぎず、少なすぎず、また、1つ1つのギャラリー毎のスペースに余裕を与え、鑑賞者の「もう1度見たい」という気持ちを、汲み取れる構成になっているように見えました。会場を回る人々も、とてもゆったりしていました。
文化的背景を感じれる作品の注目度は高い。ギャラリー ときの忘れもの(東京)の展示ブース)。 
文化的背景を感じれる作品の注目度は高い。ギャラリー ときの忘れもの(東京)の展示ブース)。 
 

アートフェアにいる人々、アートフェアを訪れる人々

アートフェアにはどのような人がいて、どのような人が訪れるのでしょうか。今回、インドネシアのギャラリーはもちろんですがアート・ステージ・シンガポールの姉妹フェアということもあり、シンガポールからのギャラリー、またはアート・ステージ・シンガポールに出展していたギャラリーが数多くアジアから参加しました。アートフェアでは、作家さんによって各ギャラリーのブースで質問などに答えてくれます。これは美術館ではなかなか味わえない交流です。 アートフェアには高額な値段がついた作品の購買を目的とした世界のトップコレクターや、アートフェア開催地の一般コレクター、また、市場の動向を知りたいアート業界人など、さまざまなお客様が訪れます。
アートフェアでは作家も参加。中央の男性はシンガポールを代表する作家、ジミー・オング(Jimmy Ong)。(ホストギャラリー(シンガポール))。 
アートフェアでは作家も参加。中央の男性はシンガポールを代表する作家、ジミー・オング(Jimmy Ong)。(ホストギャラリー(シンガポール))。 
 
1つ1つのギャラリーのスペースが大きいので大型作品がのびのびと飾られています。こちらのギャラリー(SRISASANTI SYNDICATE)はジョグジャカルタからの出展です。
1つ1つのギャラリーのスペースが大きいので大型作品がのびのびと飾られています。こちらのギャラリー(SRISASANTI SYNDICATE)はジョグジャカルタからの出展です。
 
今回のフェアではジャカルタのギャラリーの出展が多いのが特徴です。(RACHEL GALLERY)
今回のフェアではジャカルタのギャラリーの出展が多いのが特徴です。(RACHEL GALLERY)
 
シンガポールの作家Mulyanaの「Mogus」はとってもカラフル。2016年夏のシンガポールアートミュージアムでこのシリーズで展覧会に参加
シンガポールの作家Mulyanaの「Mogus」はとってもカラフル。2016年夏のシンガポールアートミュージアムでこのシリーズで展覧会に参加。
 
シンガポールとシドニーに拠点があるSULLIVAN+STRUMPFからSam Junksの「無題」。生々しさを間近で見れるのはアートフェアならではです。
シンガポールとシドニーに拠点があるSULLIVAN+STRUMPFからSam Junksの「無題」。生々しさを間近で見れるのはアートフェアならではです。
  お客様の層はアートフェアの開催地によってがらりと変化します。例えば、香港では積極的すぎるお客様が多く、作品保護のために入場規制をかける場合があります。一方、東京は非常に大人しく、ギャラリーやアーティストなどの販売側が声をかけても反応が返ってこないこともあります。シンガポールは作品の背景などの質問が非常に多い傾向があるようです。 今回のジャカルタでは比較的におとなしいけど、目的を持って作品の購入を検討するインドネシアの富裕層が多かったとのことです。 インドネシアだけでなく、東南アジアの富裕層には、応援の意味を込めて自国の作家の作品を購入する傾向があります。結果的に今回、インドネシアのギャラリーは大きなセールスを記録しました。
インドネシアを代表する作家、アファンディの展覧会も開催。 
インドネシアを代表する作家、アファンディの展覧会も開催。 
今回のアートフェアではインドネシアの作家の展覧会、展示も数多く行われました。特にアファンディ(Affandi (1907年 –1990年))の展覧会は、美術館の特別展並みの規模で開催され、多くの方が訪れていました。
ストレスフルな日本社会の自殺を減らすために考案された岡田裕子の《モヤモヤ棒体操》(ミズマギャラリー(東京、シンガポール))はたくさんの人が見入っていました。 
ストレスフルな日本社会の自殺を減らすために考案された岡田裕子の《モヤモヤ棒体操》(ミズマギャラリー(東京、シンガポール))はたくさんの人が見入っていました。 
 
村上隆の作品はジャカルタでも人気(コウジュコンテンポラリーアート(京都))。 
村上隆の作品はジャカルタでも人気(コウジュコンテンポラリーアート(京都))。 
 

日本から参加したギャラリー

海外のアートフェアには日本のギャラリーも積極的に参加しています。今回のアート・ステージ・ジャカルタでは5つの日系ギャラリーが参加しました。村上隆や安藤忠男、奈良美智などの著名な作家の作品は、このアート・ステージ・ジャカルタでも非常に人気が高かったそうです。 また、岡田裕子、葉栗剛など日本の現代を風刺するような作家の作品も注目を集めていました。
多くの人が訪れる非常にエネルギッシュなフェアとなりました。(SHONANDAI GALLERY(東京))。 
多くの人が訪れる非常にエネルギッシュなフェアとなりました。(SHONANDAI GALLERY(東京))。 
 
奈良美智など、日本の作家を購入していく人もいました。
奈良美智など、日本の作家を購入していく人もいました。
 
ときの忘れものでは安藤忠雄作品が人気でした。この作品を目当てに多くの建築家の学生さんが訪れたそうです。
ときの忘れものでは安藤忠雄作品が人気でした。この作品を目当てに多くの建築家の学生さんが訪れたそうです。
 

海外のアートフェアは現代アートを知る旅の始まりにオススメ

今回のフェアでは3日間で約1万5000人の来場者を集めました。ジャカルタのメディアによると「インドネシアコレクターの支援を受け好調なセールス」とのことで、来年の開催も期待できそうです。 アートフェアでは、その国の有名な作品、その時の旬の作品が一同に集まる、作家さんも在廊している、お客様は富裕層が多いので比較的雰囲気が落ち着いている、そしてセキュリティもしっかりしている。よくよく考えてみるといいことづくめです。 このコラムを読む前は、アートフェア! しかも海外! 絶対に敷居が高い。怖い。無理! と感じていた方も多いと思います。しかし、実は海外のアートフェアは非常に環境が整っているし、その国のアートを知る旅の始まりにはふさわしいことをご理解いただけたのではないでしょうか。 次回の海外旅行にはアートフェア訪問も組み込んでみませんか。訪問後には新しい旅の形が見えてくるはずです。 参考 Art Stage Jakarta https://theartling.com/art-fairs/1/art-stage-jakarta-2016/ Art Stage Singapore http://www.artstagesingapore.com インドネシア基礎データ | 外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html 子連れアート鑑賞日記 http://orinchan55.blog120.fc2.com  

Seina Morisako

アジアの現代アートと伝統芸能を愛するシンガポール在住のブロガー。東京在住中に子供を連れて美術館、ギャラリーを回るブログ「子連れアート鑑賞日記」を始め「家族で美術を楽しむ」視点でアートを追い続ける。現在は「Compathy Magazine」「THE RYUGAKU」などのWEBメディアやシンガポールの現地日本語メディア「Asiax」にも寄稿。横浜生まれだがボケとツッコミを忘れず日々奮闘中。