一切固定なし!? 震度6の震災には耐えた、しかし人災には負けた。アニアス・ワイルダー個展「Until the End of Time」@ 大阪、アートコートギャラリー

鈴木大輔

鈴木大輔

アニアス・ワイルダー《Untitled #201》2018、ϕ310 x 660 cm、スプルース 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー

アニアス・ワイルダー(Aeneas Wilder, 1967~)は1967年スコットランド、エディンバラに生まれました。1990年代後半からアーティスト活動を行っており、これまでにもベルギー・オランダ、イタリアなど世界各地でキャリアを重ねてきました。日本でも2003年に京都芸術センター〈アニアス・ワイルダー「転生−いつかみる風景」展〉、岩手県立美術館〈アニアス・ワイルダーの7日間〉をはじめ、青森、盛岡、名古屋、大阪、東京などで作品を発表しています。

アニアス・ワイルダーは、均一に製材された数千もの木片を、釘や接着剤など一切使用することなく木片を積み重ねるだけで巨大なインスタレーションを構築します。

アニアス・ワイルダー《Untitled #201》2018、ϕ310 x 660 cm、スプルース 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #201》2018、ϕ310 x 660 cm、スプルース 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》2018、200 x 620 x 25 cm、ユーカリ 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》2018、200 x 620 x 25 cm、ユーカリ 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》2018、200 x 620 x 25 cm、ユーカリ 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》2018、200 x 620 x 25 cm、ユーカリ 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー

アニアス・ワイルダーの個展と地震

そのアニアス・ワイルダーの個展「Until the End of Time」が大阪・天満橋にあるアートコートギャラリーで2018年6月23日まで行われていました。本展のメインでもある高さ7mの作品《Untitled #201》も釘や接着剤などでは一切固定されておらず、しかもピサの斜塔かのごとく約10度傾いており、以上に緊張感のある作品です。一段一段、数ミリずつずらして傾きを作っているのですが、気の遠くなるような作業です。

さて、2018年6月の大阪といえば記憶に新しいとは思いますが、6月18日、午前8時ごろ、大阪府北部を震源とした最大震度6弱もの大きな地震が起こり、高槻市や茨木市などでは電気、水道、ガスなどのライフラインが全て止まり、関西の交通は大混乱するなど多くの被害がもたらされました。

一方、アートコートギャラリーで開催していたアニアス・ワイルダーの作品はどうなったのでしょうか。

なんと、このアニアス・ワイルダーの《Untitled #201》は、一切固定をしていないにも関わらず、上部数段の木片が崩れ落ちたのみで、震度6弱もの地震にも耐えたのです。

アニアス・ワイルダー《Untitled #201》 筆者撮影
木片が散乱している。 アニアス・ワイルダー《Untitled #201》 筆者撮影
アニアス・ワイルダー《Untitled #201》 筆者撮影
近くで木片を見ても一切固定されていないことが確認出来る。 アニアス・ワイルダー《Untitled #201》 筆者撮影


アニアス・ワイルダーは制作中にまるでこの地震を予言するかのように「この作品は地震にも耐えられる」と言っていたそうです。
地震大国日本で作品を展示するだけに、こんな言葉が出たのかもしれません。

 

震災には耐え、人災には負けたアニアス・ワイルダーの作品

しかし筆者が見に行った時、もうひとつ展示されているはずの壁のような作品《Untitled #202》が崩れ落ちておました。「やはり震災では崩れてしまうのか」と思いアートコートギャラリーのスタッフに聞くと、実は《Untitled #201》を撮影しようと後ずさりしたお客さんが、作品にぶつかり崩してしまったというのです。

アニアス・ワイルダー《Untitled #202》 筆者撮影
崩れたまま展示されていた アニアス・ワイルダー《Untitled #202》 筆者撮影

奇しくも震度6弱もの地震に耐えられる作品も、人がぶつかるという人災には耐えられなかったようです。

 

私たちは皆、一瞬一瞬のうちに存在していて、それぞれの瞬間が一層ずつ積み重なり、最後には、その人が生きた時間そのものとなる。その一生の長さ、量、内容には何の保証もなく、そして、それはどのようにも変化し得る。システム内における変動幅と可能性は無限へと開かれているのだ。 

アニアス・ワイルダー

 

自然災害を人がコントロールすることは難しく、予期せぬ出来事にしばしば翻弄されます。それに比べると人災は注意などで回避できるはずですが、本件の結果だけを見るとその理不尽さに複雑な思いに駆られます。

震災には耐えたが、人災に耐えられなかったアニアス・ワイルダーの作品を通じて命の儚さを感じます。

 

アニアス・ワイルダー《Untitled #202》2018、200 x 620 x 25 cm、ユーカリ 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》2018、200 x 620 x 25 cm、ユーカリ 撮影:表恒匡 提供:アートコートギャラリー
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》 筆者撮影
アニアス・ワイルダー《Untitled #202》 筆者撮影

アニアス・ワイルダー:アートコートギャラリー

 

アニアス・ワイルダー「Until the End of Time」

鈴木大輔

ARTLOGUE(株式会社アートローグ、一般社団法人 WORLD ART DIALOGUE) 代表取締役CEO/編集長。大阪市立大学都市研究プラザのグローバルCOEに於ける研究プロジェクトを経て起業。2014 年グッドデザイン賞受賞、2015 年度 京都大学GTEP プログラム(文科省)ファイナリスト、2016 年ミライノピッチ(ビジネスコンテスト:総務省近畿総合通信局)においてグローバルイノベーションに値するOIH 賞を受賞。(公財)京都高度技術研究所の「京都ビジネスデザインスクール」TA。文化経済学会、デジタルアーカイブ学会所属。アートを利活用し、より良い社会の実現を目指すアートイノベーター。