大大阪から高度成長期まで―映像で辿る大阪の都市の記憶
ビルダーズ:工事記録にみる都市再考

「鉄路と汗」(1963年、京阪電気鉄道株式会社)スチル

貴重な工事記録の映像資料を期間限定で上映展示
上映展示×トークシリーズを通じて探る都市の記憶

 

2020年1月24日(金)より大阪のアートエリアB1にて都市の成り立ちを後世に示す文化遺産としての映像アーカイブを多角的に探る「ビルダーズ:工事記録にみる都市再考」が開催されます。

企業等が保有する大阪の都市形成に深く関わる地下鉄や巨大ビルディングの工事記録映像などの上映や現代の中之島を川から捉えた映像の展示、建築家、アーキビスト、視覚文化研究者、工学研究者など、さまざまな専門家による視点から読み解くトークシリーズを並走させることで、過去から脈打つ都市の様相を俯瞰すると共に、映像アーカイブの創造的な活用法、可能性について問い直します。

※同展では写真家の野口里佳による中之島のポスターおよび、現在の中之島を川から記録した映像をあわせて展示予定です。

中之島ポスタープロジェクト © 野口里佳




■上映内容
◯「大阪瓦斯ビルディング 建設の記録」
 1933年/40分/株式会社大林組所蔵

「大阪瓦斯ビルディング 建設の記録」(1933年、株式会社大林組所蔵)スチル

御堂筋に面し、現在は国の登録有形文化財にも指定されている大阪ガス本社ビルの工事記録映像。設計は安井武雄、施工は大林組。冷暖房完備など当時最先端の設備を備え、食堂やガス料理講習室、講演場が設けられたハイカラな施設として一般にも親しまれた通称ガスビルは、約3年で延べ18万人近くを動員する一大事業だった。鉄骨を組み上げていく鳶職人、高熱のリベットを遠くから投げて空中で受け取る鉸鋲工など、当時の高度な職人のふるまいに目を見張る。


◯「大大阪観光」
 1937年/29分/大阪市所蔵

「大大阪観光」(1937年、大阪市高速電気軌道株式会社所蔵)スチル

大阪市電気局と産業部が市営交通機関の普及と観光宣伝を目的に制作した映像資料。1933年に開業した大阪市営地下鉄や、バスを乗り継ぎ、通天閣、住吉大社、大阪城、電気科学館などのランドマークを巡り、観光艇で大阪市中央公会堂を臨みながら中之島などを周遊する。工事記録とは異なるが、建物内部の紹介や浪花踊り、水上生活者の暮らしの様子なども交え、経済・文化において栄華を極めた「大大阪」時代の都市景観や産業、風俗を多面的に伝えている。

 
◯「新朝日ビル誕生」
 1958年/30分/株式会社竹中工務店所蔵

「新朝日ビル誕生」(1958年、株式会社竹中工務店所蔵)スチル

中之島にあった朝日ビルディングのオフィスビルの工事記録。設計、施工は竹中工務店。当時国内最高の高さ45メートル、37トンもの外装アルミパネルの外観、ホテルと国内最大級のホールであるフェスティバルホールを備えた建造物は、中之島でもひときわ目立つ存在だった。高度で大胆かつ繊細な職人の技能で当時最大規模のマンモスビルの鉄骨が複雑に組み上がる様は壮観であり、建設前後で比べると中之島の景観が大きく変わる様子がよく分かる。

 
◯「鉄路と汗」
 1963年/49分/京阪電気鉄道株式会社

「鉄路と汗」(1963年、京阪電気鉄道株式会社)スチル

3年の歳月をかけて行われた京阪電鉄淀屋橋地下延長線(天満橋駅─淀屋橋駅間)工事の記録。交通量の多い天神橋への影響を最小限に抑えるトンネル工事、スコップで土を掘り出す作業員の様子、地下線での試運転などが、工法の詳細な説明とともに記録されている。私鉄の大阪都心乗り入れ第一号という京阪の悲願達成にあたっての熱のこもった劇的な演出は、映像作品としても興味深い。天満橋近辺のオフィス街や人々の様子など当時の風景や世相が刻まれている。



■概要
会 期:2020年1月24日(金)~3月22日(日)
会 場:アートエリアB1
時 間:12:00〜19:00
休 館:月曜日
*ただし2/24開館、翌2/25休館
料 金:無料
URL:http://artarea-b1.jp/nakanoshima/

 

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