ARTLOGUE主催「ManiA ミーティング & ミートアップ @ 愛知:文化と政治をむすんでひらく」に、「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督 津田大介氏が登場。「あいちトリエンナーレ2019」を巡る現状について説明する。

ARTLOGUE主催「ManiA ミーティング & ミートアップ @ 愛知:文化と政治をむすんでひらく」に、「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督 津田大介氏が登場。「あいちトリエンナーレ2019」を巡る現状について説明する。

ARTLOGUE主催「ManiA ミーティング & ミートアップ @ 愛知:文化と政治をむすんでひらく」が、8月17日(土)に名古屋・綿覚(わたかく)ビルにて開催されました。

会場となった綿覚ビル

「ManiA」とは、第25回参議院議員通常選挙の「全ての候補者」を対象に、文化芸術に対するこれまでの活動や今後のビジョンをアンケートで尋ね、それらを「文化芸術マニフェスト」として特設WEBサイトで公開するプロジェクト。日本に息づく文化芸術を持続可能な状態で発展させるために、 政治の場で文化芸術がもっと重要な課題として取り扱われる必要性があるとの思いから実施されたもの。今後も同様の取り組みを国政選挙、首長選挙で行いますが、「文化芸術と政治」を巡る現状の課題と解決策をみんなで話し合い、文化芸術がより発展出来る土壌を培うことを目指して、今回のミーティングを企画しました。

画像左より吉田氏、鈴木

同ミーティングには、ゲストとして、津田大介氏(ジャーナリスト、あいちトリエンナーレ2019芸術監督)、吉田隆之氏(大阪市立大学大学院都市経営研究科准教授、元愛知県職員)、ファシリテーターとして、鈴木大輔(株式会社アートローグ 代表取締役CEO)、司会として名畑恵氏(NPOまちの縁側育くみ隊代表理事/錦二丁目エリアマネジメント株式会社代表取締役)らが参加。警備などの問題から、津田氏が出演予定のイベントが連日中止となるなか、会場にはTVカメラ4台を含む多数のメディアと参加者が集まっていました。そんな中、「あいちトリエンナーレ」の企画展である「表現の不自由展・その後」が展示中止となったことに関して、津田氏が説明しました。

これまでの経緯や現状について語る津田氏

「表現の不自由展・その後」が展示中止の経緯として、まず7月31日(水)の朝刊に《平和の少女像》展示の報道が出たことで、午後には事務局の電話回線がパンク状態に。8月1日(木)には、事務局への抗議電話が殺到、他業務が行えない状況になりました。8月2日(金)の朝、ガソリンテロを予告する脅迫FAXが届き、視察を行った河村たかし名古屋市長が大村秀章愛知県知事に対して《平和の少女像》の展示中止を求めました。8月3日(土)に、このままでは安全性が確保できないとの理由から、同展示を中止するに至りました。

吉田氏は今回中止になった件に関して、1.職員の疲弊(職員の温度差からくる不協和音)、
2. 組織機能が一時停止、3. 円滑、安全な運営の担保ができない、以上の3つを挙げています。

吉田氏

津田氏も「脆弱性が露呈してしまった」と責任を感じているといいます。「テロに屈したという批判もあるが、現場が混乱していて、続けていいのかと考えた。まず第一に観客、職員の安全を守らなければならない」と苦渋の決断をしたそう。「中止は織り込み済みという炎上マーケティングではないかという意見もあるが、それは明確に否定したい。75日間やりきることしか考えてなかった」とコメントしました。また、海外アーティスト11組が展示の中断を申し入れた件に関しては、「今回の件は検閲ではなく、表現の自由に対するテロ行為だ」と説明していると述べました。

「表現の自由は後退したか?」という吉田氏からの質問に対しては、「社会的に大きなトリガーをひいたが、そもそも表現の自由は後退していたのではないか。もちろん、今回の準備不足という意見は受け入れるが、様々な意見を汲み取ると自由ではないのではないか」との見解を示しました。8月3日の時点では「『電突(電話による突撃抗議)』で文化事業を潰すことができてしまうと言う成功体験、あしき事例を作ってしまった」と発言していましたが、その後、「ここで終わらせるのではなく、公開フォーラムや、もっといろいろな場面を作って、悪しき事例ではないとしたい」、と前向きな心境の変化が見られました。

今後、「表現の不自由展・その後」の再開はあるかに関しては、「メールの脅迫犯への対応、整備体制、電話抗議の問題、第3者委員会、アーティストとのディスカッションといった課題があり、現時点ではハードルが高い。これらの方向性が見えて、初めて次の段階に進める」と述べました。

最後に、「『表現の不自由展・その後』は、100個近くある企画のうちの1つ。初めてあいちトリエンナーレに来場した方は5割以上にのぼる。これまで美術に興味がなかった方々が来てくれていて有難い。正確な数字は出ていないが、前回の来場者を上回っている。あいちトリエンナーレはまだ2カ月近く開催されているので、ぜひ会場に足を運んでもらいたい」とコメントしています。

津田氏

 

◯ 文化芸術マニフェストを問う ManiA(Manifest for Arts)by ARTLOGUE 
https://www.artlogue.org/mania

ManiA(Manifest for Arts)クラウドファンディングサイト
https://motion-gallery.net/projects/mania_artlogue

 

 

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