「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の中止を受けて、第1回「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」が8月16日(金)に開催。「公開フォーラム」の実施も検討。

「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」初会合の様子(会場:愛知県庁)

「あいちトリエンナーレ2019」の企画展である「表現の不自由展・その後」が、いわゆる慰安婦像などの展示で物議を醸し出し、展示中止となったことを受けて、愛知県は第三者委員会「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」を設置し、8月16日(金)に愛知県庁にて初会合が行われました。

同検証委員会は、独立行政法人国立国際美術館 国際美術館長の山梨俊夫氏(座長)、慶應義塾大学総合政策学部教授の上山信一氏(副座長)、美術館運営・管理研究者、青山学院大学客員教授の岩淵潤子氏、文化政策研究者、独立行政法人国立美術館理事の太下義之氏、信州大学人文学部教授の金井直氏、京都大学大学院法学研究科教授の曽我部真裕氏の計6名で構成。大村秀章愛知県知事はオブザーバーとして参加しています。

「表現の不自由展」は、日本における「言論と表現の自由」が脅かされているのではないかという強い危機感から、組織的検閲や忖度によって表現の機会を奪われてしまった作品を集め、2015年に開催された展覧会。「慰安婦」問題、天皇と戦争、植民地支配、憲法9条、政権批判など、近年公共施設で「タブー」とされがちなテーマの作品が、当時いかにして「排除」されたのか、実際に展示不許可になった理由とともに展示したもの。「表現の不自由展・その後」では、「表現の不自由展」で扱われた作品の「その後」に加え、2015年以降、新たに公立美術館などで展示不許可になった作品を、同様に不許可になった理由とともに展示しました。

7月31日(水)の朝刊に《平和の少女像》展示の報道が出たことから、抗議の電話が殺到。その後、視察を行った河村たかし名古屋市長から大村知事に対して《平和の少女像》展示中止と撤去が要請される等、政界からも様々な声が上がりました。加えてガソリンテロを予告する脅迫FAXが届き、8月3日(土)に大村知事と津田大介芸術監督が、安全性の確保ができず、円滑な運営ができないことから、「表現の不自由展・その後」の展示を中止することを決定しました。

同検証委員会では、「関係者へのヒアリングを徹底して課題の抽出をし、解決策を出すべき」(山梨氏)、「昨今SNSが登場して公共空間の認識が異なってきている。閉ざされた空間である美術館が開かれて極めて現代的な問題」(岩淵氏)、「表現の自由や公金を使った芸術作品の展示のあり方など、論点の紐がこんがらがっている。一つ一つの論点を整理していくべき」、「安全性を確保したうえでの展示再開は極めて困難で、展示再開の声が多数出ている状況は、現実的とずれている。主体性を欠いた無責任な意見が、インターネット空間であたかも正しいかのごとく発信されている」(太下氏)、「今後、アーティストが公共イベントに出展する際、政治的なので止めておこうといった忖度が生まれるのは、社会全体にとって良くない」、「アートと政治はお互い理解し合えないのか。表現の自由は悩ましい問題」(上山氏)、「展示中止の原因が検閲ではないかという説が出ているが、これはテロ行為によるもの」(金井氏)などの発言が繰り広げられ、「今回の件は賛否両論ある。県民、関係者、作家、キュレーターなど、幅広い範囲にヒアリングが必要」との意見が上がりました。

同委員会を進めるにあたって、今後はワーキングチームを設け、事務局の協力のもと資料の収集分析、関係者や有識者へのヒアリングを行っていくとのこと。9月下旬を目途に1回目の経過報告(第2回委員会)を実施するといいます。そして、それらでわかった事実関係を広く情報公開したうえで、広く県民、作家、キュレーターや識者に「あるべき姿」について公開で討論してもらう「公開フォーラム」を9月中目途で開催することが提案され、この2案に関してすべての委員が賛成を表明しました。

大村知事も「情報公開と県民の参加が大切」として、公開フォーラムの実施に賛同。「90名を超える国内外のアーティストにも積極的の声を掛け、ビデオレターなどで参加してもらいたい」とコメント。「津田芸術監督にも、メインとして参加していただきたい」と述べました。また、繰り返し「安心・安全が守られなければ、円滑な運営ができない」とし、様々な要因が重なり問題となっている今回の件について、検証を進めていく考えを示しました。
 

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