平成28年度 芸術選奨受賞者紹介。美術、芸術振興、メディア芸術部門

ARTLOGUE 編集部

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橋本真之《果実の中の木もれ陽》1985年~ 写真提供:埼玉県立近代美術館

文化庁は3月8日、平成28年度(第67回)芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞の受賞者を発表しました。

美術、芸術振興、メディア芸術の受賞者と授賞対象作品、贈賞理由をご紹介します。

 

文部科学大臣賞

美術

鴻池 朋子 (アーティスト) 
授賞対象:鴻池朋子展「根源的暴力 Vol.2」ほかの成果

鴻池朋子展「根源的暴力」展示風景 神奈川県民ホールギャラリー
鴻池朋子展「根源的暴力」展示風景 神奈川県民ホールギャラリー

贈賞理由:鴻池朋子氏は,これまで神話や超自然的な物語を彷彿(ほうふつ)とさせる幻想的な世界観を,多彩な表現で紡ぎ出し,国内外で高い評価を得てきた。群馬県 立近代美術館で開催された個展では,震災を契機に変化した人間と自然との関わり方についての人間の意識を敏感に感じ取り,自然に背く行為でありながら, 人間はなぜ,「もの」を創るのかという芸術の根源的な意義について,作品を通じて問い掛けた。これまでの芸術活動の在り方を再構築することによって生み出された作品群は,原初的な魅力を放つとともに芸術の新たな可能性を提示した。

関連URL:http://tomoko-konoike.com/

 

橋本 真之 (鍛金造形家) 
授賞対象:「果実の中の木もれ陽」公開制作ほかの成果

橋本真之《果実の中の木もれ陽》1985年~ 写真提供:埼玉県立近代美術館
橋本真之《果実の中の木もれ陽》1985年~
写真提供:埼玉県立近代美術館

贈賞理由:球状と円筒状形態の不規則な連続が膨張し拡大していく限りなく力強い金属造形。これが,橋本真之氏が約40年以上追求してきた形である。平成28年の公開制作(埼玉県立近代美術館)はその創作を新たな高みに押し上げるものであっ た。たたけば延びる素材の本性と作家の形の意識の融合として造形を捉える, 工芸的な造形の本質をこれほど徹底して追求した例はない。それはまた現代美術と工芸を融合する新たな造形の誕生でもある。

関連URL:http://www.pref.spec.ed.jp/momas/index.php?key=jouf61tew-574

 

芸術振興

衛 紀生 (可児市文化創造センター館長) 
授賞対象:「私のあしながおじさんプロジェクト」ほかの成果

私のあしながおじさんプロジェクト
私のあしながおじさんプロジェクト2016

贈賞理由:衛紀生氏は,平成20年に可児市文化創造センター館長に就任して以来,「地域社会への貢献」「世界水準の舞台制作」を2本の柱に掲げ,市内の中高生を主催公演に招待し劇場体験する「私のあしながおじさんプロジェクト」を立ち上げた。 平成28年は,親子が一緒に舞台芸術鑑賞を体験し,親子のコミュニケーションを取り戻す目的を持つ「私のあしながおじさんプロジェクト for Family」が軌道に乗り,大きな成果を上げた。そのほか,「まち元気プロジェクト」など,地域の文化資本や資源を活用して,継続的に地域社会の活性化を図っている。正に全国の劇場・音楽堂の範となる「社会包摂活動」の先駆者である。

関連URL:http://www.kpac.or.jp/topics/detail_810.html

 

メディア芸術

秋本 治 (漫画家) 
授賞対象:「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の成果

こちら葛飾区亀有公園前派出所
こちら葛飾区亀有公園前派出所

贈賞理由:秋本治氏は,広く知られたマンガ作品「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の作 者である。このマンガは,40年にわたって「週刊少年ジャンプ」誌に一度の休載もなく連載され,コミックス単行本が200巻に達した驚異的作品である。ギャグマン ガとしての面白さはもちろん,アクションの醍醐味(だいごみ)や人情の機微を表現する豊かな物語世界,コマ割り等表現面への実験的チャレンジ,さらに時々の話題に関する情報提供や地域活性化のツールとしての役割等々,多面的な魅力・意義を具(そな)える。比類のない仕事であり,これにより文化アイテムとしてのマンガの意義・価値を高め広めた氏の功績は,極めて大きい。

関連URL:http://www.j-kochikame.com/

 

文部科学大臣新人賞

美術

田根 剛 (建築家) 
授賞対象:「エストニア国立博物館」の成果

「エストニア国立博物館」 photo: Takuji Shimmura / image courtesy DGT.
「エストニア国立博物館」 photo: Takuji Shimmura / image courtesy DGT.

贈賞理由:田根剛氏は平成18年に「エストニア国立博物館」の設計競技において,弱冠26 歳で最優秀賞を獲得し,様々な困難を乗り越えてこの建築を同28年完成させた。ソヴィエト連邦時代の負の遺産である軍用滑走路をそのままモチーフに取り込  んだ建築は,シャープでインパクトのある造形により,「過去の記憶の継承」だけでなく,エストニアの「未来への飛翔(ひしょう)」を予感させる優れたものである。この建築の完成により,現在世界で最も注目されている若手建築家の一人となっている。

関連URL:http://www.at-ta.fr/

 

芸術振興

猪子 寿之(チームラボ代表) 
授賞対象:「人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング-Infinity」ほかの成果

人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング / Drawing on the Water Surface Created by the Dance of Koi and People - Infinity
人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング / Drawing on the Water Surface Created by the Dance of Koi and People - Infinity

贈賞理由:猪子寿之氏が代表を務めるチームラボの活動は美の概念を拡張させ,新たな感覚の世界を創出している。デジタルテクノロジーによって物質の媒介から解放された作品の境界は曖昧(あいまい)になる。このような思考の中で開発された,「teamLab: Dance! Art Exhibition, Learn & Play! Future Park」は世界各地で開催され,多くの観客を集めた。平成28年には,シンガポールに「FUTURE WORLD: WHERE ART MEETS SCIENCE」がオープンし,常設展示された。氏らの創作活動は,現実社会にあらざるをえない物質によって仕切られてしまっている境界を透かしていくことにより,多くの社会問題さえも解決していくのではないかと期待される。

関連URL:https://www.team-lab.net/jp/w/koi_and_people/

 

メディア芸術

毛利 悠子(美術家) 
授賞対象:個展「Pleated Image」ほかの成果

Pleated Image: Butterfly, 2016
Pleated Image: Butterfly, 2016

贈賞理由:毛利悠子氏は平成28年を通して,東京での個展「Pleated Image」を筆頭に,台北,ニューヨークでの個展,さらに,8つのグループ展への招聘(へい)参加など, 卓越した活動を見せた。メディアアートを背景とする技術への理解を,制作の文脈や置かれる場所の特性を生かしたインスタレーションへと展開する能力は,領域横断的な音楽作品とも,楽器作品とも,彫刻とも,更にはインタラクティブ作品とも解釈することの可能な,氏独自の世界となっている。また,氏自身の天性の コミュニケーション能力は,大きな展開につながる可能性があり,これからの日本人アーティスト像を先取りするものである。

関連URL:http://mohrizm.net/archives/2178