日本人の美意識を再認識させてくれる「matohu 日本の眼」展

日本人の美意識を再認識させてくれる「matohu 日本の眼」展

日本人が歴史の中で洗練させてきた「美意識」。それは日常を切り取り、新鮮な目線で見つめることで、生活に発見と喜びを生み出すことでした。しかし急激な近代化とグローバル化の中で、長く育まれてきた感性は忘れ去られようとしています。そんな時代にこそ深い価値を持つのは、時代を経てもなお新鮮さを失わない「眼」、すなわちオリジナルな美意識ではないでしょうか。

東京発の服飾ブランド「matohu(まとふ)」では、「日本の眼」というタイトルのもと、服飾デザインを通して8年間で17章のコレクションを発表してきました。その最新のデザインと古来の美意識との融合は、ファッション界にとどまらず国内外で多くの評価を得てきました。

そんなmatohuが展開する「matohu 日本の眼」展は、「かさね」「無地の美」「映り」「やつし」など16テーマにわけた日本の美意識をインスタレーション形式で表現し、matohuの最も代表的なアイテム「長着」を通して展示。空間構成は、ランドスケープデザイナーの団塚栄喜氏と語らいながら、「日本庭園」のイメージで作り上げています。

例えば、青竹をスパッと割って表裏のストライプにし、ストライプの長着を展示したインスタレーションは、「いき」を表現しています。

「いき」のインスタレーション

「いき」とは、江戸時代に町人や芸者など庶民の生き方の理想となった美意識です。哲学者 九鬼周造はこれを3つの概念で説明しています。まず、世間の荒波にもまれて、酸いも甘いも噛み分けられる「あか抜けた」大人であること。二つめに、他人に甘えず自分のプライドを持って生きる精神的な「張り」があること。最後に、匂い立つような人間的な「色気」があること。この3つを持ち合わせた人が「いき」だというのです。つまり「いき」とは、たとえはかない浮世であっても人生を「意気」に感じて歩んでいくことであり、美意識をもって「生き」る覚悟そのものなのです。人の世の表も裏も知り抜いて、人生の「節目」を大切にし、いつまでも「青い」志を忘れない。そんな「いき」方を青竹で象徴しています。

また、軽やかに、ふわりと生けられた一輪の梅の花と、ごく普通のギンガムチェックの長着が展示されたインスタレーションは、「かろみ」を表現。

「かろみ」のインスタレーション

「かろみ(軽み)」とは、松尾芭蕉が晩年にとなえた俳諧の理想です。教養や技巧をこらしたような「重い」句ではなく、ごくあたりまえの生活世界を平易な言葉で描き切る。しかし軽やかで自然であることこそ、もっとも難しいことかもしれません。なぜならそれは物数を尽くし、理想を求め続けた時に生まれる「普遍」の世界だからです。ギンガムチェックの長着という一見ありふれたテキスタイルの中に、小さな波文様が隠れています。平明に見えるものにあえて手を尽くし、心を込める。そのことが、軽やかな面白みを生み出しています。

matohuデザイナーの堀畑裕之氏は「日本人が歴史の中で培ってきたものをいただき、コンテンポラリーな形で紹介しています。ポップアップストアもあるので、ゆっくり楽しんでいただけたら」と語っています。

(左から)matohuデザイナーの関口真希子氏、堀畑裕之氏matohuのバッグや靴下なども販売。

本展は、アートインスタレーションの他、限定250部の書籍『日本の眼』和綴じ本や、日々の果子を提案する和菓子店「HIGASHIYA」とのコラボ和菓子、畑中正人氏によるmatohuコレクション音楽アルバムの販売なども行われています。また、matohuデザイナーの堀畑氏と関口真希子氏によるトークイベントや、畑中氏のライブコンサート、matohu長着茶会なども実施される予定です。

和菓子店「HIGASHIYA」とのコラボ和菓子。matohuのロゴにちなみ、伝統文様の千鳥格子を模した寒氷。小豆で色づけした〝紅〞、酒粕の芳醇な香り漂う〝白〞の二種。

日々の生活に気づきと豊かさをもたらすヒントを見つけに、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょうか?

いつも通り過ぎる見慣れた風景が、ふいに新鮮な美しさで輝き出したら、あなたも今日「新しい眼」を手に入れたのかもしれません。
 


■「matohu 日本の眼」展
会 期:2020 年 1月8日(水)〜1月22日(水)
会 場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
時 間:11:00~20:00
料 金:入場無料
問合せ:matohu表参道本店
Tel. 03-6805-1597  
Mail : matohu@lewsten.com

■関連イベント
〇畑中正人 ライブコンサート 「matohu oto」
matohuのショー音楽を作ってきた作曲家 畑中正人氏のライブコンサート。
歴代コレクション音楽をモチーフとした曲が展覧会場に鳴り響きます。
日 時:1月18日(土)15:00~
料 金:無料
*要予約(着席30名)

〇matohu長着茶会
matohuデザイナーがお茶を点て、HIGASHIYAの和菓子職人がその場で作ってくれた和菓子をいただく立礼茶会です。
普段着でもOK。長着をお持ちの方はぜひまとってご参加ください!
日 時:1月19日(日) 13:00~、14:30〜、16:00~ 
料 金:4,000円
*要申込・先着順(各回定員12名)
 

※関連イベントへのお申込みは以下よりお願いいたします。
matohu表参道本店 
Tel. 03-6805-1597  
Mail :matohu-shop@lewsten.com

 

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