粋な江戸の雰囲気を楽しめる「レスコヴィッチコレクション 広重・北斎とめぐるNIPPON」展

粋な江戸の雰囲気を楽しめる「レスコヴィッチコレクション 広重・北斎とめぐるNIPPON」展

近年、欧米のコレクターによる里帰り展で、日本から国外へと海を渡った名品と再会する機会が増えてきました。特に、19世紀の欧米で美術工芸の世界に多大な影響を与えた浮世絵には海外の愛好家も多く、それぞれの特徴あるコレクションは私たちの眼を楽しませてくれます。 

2019年8月27日(火)から10月20日(日)の間、京都の細見美術館に、パリ在住のポーランド人コレクター、ジュルジュ・レスコヴィッチ氏の浮世絵コレクションが登場。江戸時代の始まりとともに誕生した浮世絵は、生活や流行、役者、遊女などをテーマとし、庶民を中心に人気を博しました。

レスコヴィッチ氏は他の外国人浮世絵コレクター同様、日本でも人気の高い鈴木春信、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川広重、葛飾北斎といったビッグネームを含む浮世絵作品を所蔵しています。どれも大変質が良く、「ぜひ日本で紹介したい」と細見美術館館長がラブコールを送って、今回の展覧会が実現しました。3フロアからなる細見美術館での展覧会は、各フロアの雰囲気が異なり、1点1点の作品と対峙できる空間となっています。仰々しくではなく、もっと身近に浮世絵を感じてもらえたらという思いが随所に感じ取れます。
 

会場の様子



今回の展覧会の中でも最も注目すべき作品は、江戸と京をむすぶ中山道(木曾街道)を主題とした浮世絵木版画の連作「木曾街道六拾九次之内」です。

歌川広重「木曾海道六拾九次之内 洗馬」

 

歌川広重「木曾海道六拾九次之内 上ケ松」

はじめ、渓斎英泉(けいさいえいせん)によって天保6年(1835)頃から刊行されましたが、なんらかの理由で広重が引き継ぐことになりました。その結果、英泉が24図、広重が47図を分担しています(広重が作画した作品タイトルは「木曽海道六拾九次之内」)。全図が揃っている本作ですが、特に、英泉画の摺りのレベルが非常に高いとされており、当時の状態を味わうことができます。また、英泉の手がけた図は、初版とみられるものを除いて署名が削除されていますが、今回展示の「桶川」や「本庄」の作品では署名が確認出来、大変貴重なシリーズとなっています。全てが初摺の珍しい作品という点にも注目です。英泉と広重の表現の違いを比べてみるのも面白いですね。 


本展はこの「木曾街道」を中心に、広重の「六十余州名所図会」、「京都名所」、さらには北斎の「富嶽三十六景」、「諸国名橋奇覧」、「琉球八景」など、昔も今も変わらぬ人気のスポットへ、みなさんを誘います。

歌川広重「六十余州名所図会之内 肥前」

 

葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州石班沢」

 

葛飾北斎「諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧」

美術館にいながら日本の名所をめぐり、さらには春信や歌麿の美人画、写楽の役者大首絵などを通して、粋な江戸の雰囲気を感じ取ることができます。 絵師は何を見せたいのかを意識して作品を鑑賞すると、楽しみが広がります。総展示数150点(前期/後期含む)という浮世絵が揃っており、版画の美しさ、面白さを堪能できる、またとない機会となること請け合いです。


■「レスコヴィッチコレクション 広重・北斎とめぐるNIPPON」展
会期:2019年8月27日(火)~10月20日(日)
   前期:8月27日(火)~9月23日(月・祝)
   後期:9月25日(水)~10月20日(日)

会場:細見美術館(京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3)
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
*ナイトミュージアム 9月5日(木)は20:00まで延長開館(入館は19:30まで)
休館:月曜日(祝日の場合は、翌火曜日)
料金:一般 1,500(1,400)円、学生 1,000(900)円、中学生・小学生は無料
※()内は20名以上の団体料金
問合せ:075-752-5555

売店には、浮世絵をモチーフとしたトートバッグやガーゼ手拭い、絵葉書セットなど

 

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