開館15周年を迎えた国立新美術館で開催中! 子どもから大人まで楽しめる「ワニがまわる タムラサトル」展

2007年に独立行政法人国立美術館に属する5番目の施設として開館した「国立新美術館」は、今年開館15周年を迎えました。特定のコレクションを持たず、国内最大級の展示場(14,000㎡)を生かして、現代美術はもちろんのこと、ファッション、デザイン、建築、マンガ、アニメなどの多彩な展覧会の開催、また美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及などを行うといった、既存の概念に縛られることのない、まったく新しい形の美術館です。
国立新美術館に到着して一際目を惹くのが、建物の前面を覆っている、波打つような曲線が印象的なガラスのカーテンウォール。周辺の緑と調和するように存在するこの建築物を設計したのは、日本を代表する建築家、黒川紀章氏。この美術館は様々な機能性を追求して設計されており、免震装置による地震・安全対策、雨水の再利用による省資源対策、床吹出し空調システム等の省エネ対策、ユニバーサルデザインへの対応、地下鉄乃木坂駅直結の連絡通路など、デザイン・機能性ともに優れた建築物となっています。

開館15周年という記念の年に、2022年7月18日(月・祝)まで開催中なのが、現代美術家・タムラサトル氏の個展「ワニがまわる タムラサトル」。タムラ氏は、作品から意味性・目的性を徹底的に排することをテーマとしながら、主に電気で動く立体作品を制作してきました。本展覧会では、タムラ氏の代表作の一つであるシリーズ作品「まわるワニ」を、新たに大規模なインスタレーションとして展開しています。
タムラ氏は1994年、大学3年生のときに、三田村畯右先生の授業で「電気を使った芸術装置を作りなさい」といった課題を出されたことが「まわるワニ」を作るきっかけになったといいます。それまでキネティックや電気仕掛けの作品を全く作ったことがなかったそうで、何をしていいのかわからないままプラン発表の前日になってしまい、朝起きて思いついたものを作ろうと決めて就寝。翌朝、なぜか「ワニがまわる」という絵が頭に浮かび、それで4.5mの緑色のワニを作ることになったそう。彼は、完成した毎分30回転(1994年当時)する作品を見ていたく感動してしまい、まるで他の作家の作品を見ているような感覚に。「これで作家になれる」と思い、現在に至るといいます。
今回の展覧会に際し、タムラ氏は国立新美術館の広々とした展示空間にあわせて、新作の約12mの巨大ワニ1体と、ワークショップに参加した小中学生9名と大人15名の一般の方のワニの作品を含む1,101体の新作などを合わせて、全1,124体の大小さまざまなサイズのワニを組み合わせて配置し、それらが一斉に回転する壮大なインスタレーション《スピンクロコダイル・ガーデン》を構想しました。ウレタンやスチロール、ペーパークレイによって制作された色とりどりの多数のワニの彫刻が、それぞれの回転数で回り続ける世界感に圧倒されることでしょう。


タムラ氏は「ワニがまわる理由は、聞かないでほしい。なぜ『ワニがまわる』のか、意味を考えながら作り続けました。その結果『ワニがまわる』ことに意味があるのではなく、『よくわからないが、なぜかワニがまわっている』という不可思議なこの状況こそが、作品の面白さの本質であることに気づいたのです。『なぜ、ワニがまわるのか』という問いに答えはありません。この大きな疑問を、そのまま疑問として持ち帰ってほしいと思っています」と語っています。
本展は、観覧無料です。国立新美術館の特定研究員の吉村氏は「タムラ氏の作品はカラフルでキャッチ―なので、足を止める方が多い。お子さんにも喜んでいただけると思う。非言語的なところも良い。観覧料は無料なので、気軽に入ってアートに親しんでほしい。ミュージアムデビューを促すきっかけになれば、と思っている」と述べています。
ユーモアに満ちたタムラ氏の作品は、既成の価値観を揺さぶり「アートとは何か」という問いについて考えさせてくれます。また、作家の自由で豊かな想像力に触れることで、アートを身近に感じることができ、子どもから大人まで楽しんでいただける展覧会となっています。ぜひ、「ワニがまわる タムラサトル」展に足を運んでみてはいかがでしょうか。
開催概要
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■「ワニがまわる タムラサトル」
会 期:2022年6月15日(水)~7月18日(月・祝)
会 場:国立新美術館 企画展示室1E
時 間:10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休 館:火曜日
料 金:無料
URL :https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/spinningcrocodiles/
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