清春芸術村にある安藤忠雄設計の「光の美術館」と共鳴する、脇田玲「PHOTONS」 展

清春芸術村にある安藤忠雄設計の「光の美術館」と共鳴する、脇田玲「PHOTONS」 展

山梨県北杜市に所在する文化複合施設「清春(きよはる)芸術村」をご存じでしょうか? 1977年、東京・銀座にて吉井画廊を営んでいた吉井長三氏が、小林秀雄氏、今日出海(こん ひでみ)氏、白州正子氏、谷口吉郎氏、正田英三郎氏、東山魁夷夫妻らと、桜の季節に清春の地を訪れたことがきっかけとなり始まった「清春芸術村」。広大な敷地内に、シンボル的存在「ラ・リューシュ」をはじめ、建築家 谷口吉生氏の設計によって開館した「清春白樺美術館」、建築史家 藤森照信氏設計の「茶室 徹」、杉本博司氏と榊田倫之氏の新素材研究所によるゲストハウス「和心」など、数々の名建築が一堂に集うアートスポットです。この芸術村が位置するのは、廃校になった旧清春小学校の跡地。1925年に校舎落成の記念として植えられた桜の老木が敷地を囲み、春には桜の名所としても知られています。

清春芸術村には、2011年、安藤忠雄氏の設計により創設された、自然光のみの美術館「光の美術館」もあります。一切の人口照明がない展示室では、四季や天気、そして昇りまた沈む陽の動きによって、刻一刻と変化する光の中に身を置くこととなります。無機質なコンクリートの空間に差し込む光の美しさを最大限に使った、まさに安藤氏ならではの建築と言えるでしょう。

そんな「光の美術館」にて、脇田玲 「PHOTONS 」展が、2019年11月9日(土)から2020年2月2日(日)まで開催中です。この展覧会は、安藤氏の設計した自然光のみの同美術館の中で、光子(光の粒子)をモチーフとして、平面、映像の作品を展示。その空間にあふれる光子の存在にあらわにすると共に、この世界を再解釈するきっかけを味わうことができます。

アーティストでありサイエンティストの脇田氏はコンセプトについて次のように述べています。

光は波であると同時に粒子でもある。このことに気がついたアインシュタインは、光量子仮説を提唱し、ノーベル物理学賞受賞しました。現在の量子力学では光の粒子は『光子(Photon)』と呼ばれています。この展覧会では、光子による世界の再解釈をテーマにしました。安藤忠雄の設計した光の美術館の中で、その空間にあふれる光子の存在に意識的になることで、空間が空間でなくなり、光が光でなくなるような体験を提供したいと考えました。ところで、量子力学の世界観と、仏教的な世界観は高い親和性を見せることが近年指摘されています。チベット・インド仏教の高レベルな瞑想者は、その修行の末に光子を見ることができると言われています。禅や仏教の修行の目的の一つは量子論的世界を感得することなのかもしれません。そうだとすれば、物理学の営みと、仏教の営みは、正反対のアプローチから、同じ目的に向かって進んでいるのかもしれません。もし、仏教的な営みから量子論的世界の本質に至れるのであれば、その反対のアプローチ、つまり物理学的な営みから禅的な本質に至ることができないかと考えました。光子の振る舞いをモチーフにした作品を鑑賞することを、禅的な悟りに至るための第一歩として位置づけても良いのではないかと考えたのです。

ぜひ、清春芸術村の「光の美術館」に足を運んで、脇田氏が表現した光子の世界を満喫してみてくださいね!

■脇田玲 「PHOTONS」 展
会 期:2019年11月9日(土)~2020年2月2日(日)
会 場:光の美術館(清春芸術村)
〒408-0036 山梨県北杜市長坂町中丸2072
時 間:10:00~17:00
*入館は16:30まで
休 館:年末年始・月曜日(祝日の場合は翌平日休み)
料 金:一般 1500(1400)円、大高生 1000(900)円、小中学生 入場無料
*清春白樺美術館・光の美術館入館料を含む 
*()内は20名以上の団体料金
問合せ : Tel. 0551-32-4865

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