連載 『子どもと一緒にアートなお出かけ』 第四話 「言葉を話すようになったらどうする?」
アートブロガーのSeina Morisakoです。みなさん、赤ちゃんと一緒にアートなお出かけしていますか?極端に言うと、美術館に出かけなくてもいいんです。アートを親子で身近に感じていますか?
話すようになるのは嬉しい、でも。
赤ちゃんが発声から会話へ移行するととても楽しくなります。「ああ!こんなこと言った!」とか。毎日が発見です。
でも、気をつけなくてはいけないのは、自分と子どもは楽しくても、「赤ちゃんとの会話を聞いて、全ての人が機嫌がよくなる訳ではない」ということです。とくに日本の美術館のような静寂を求められる場所では子供の声は目立ちます。
言葉を話す人は赤ちゃんであっても人間
外国の美術館に言っても会話が気にならないのに、日本の美術館だと人の会話が気になるということはありませんか?
それは根本的な理解言語(母語)の影響ではないかと感じます。赤ちゃんであろうとも言語を話すと、その言語を理解する人には「情報として伝わる」のです。連れていくお母さん、お父さもそうした状況を十分理解しておくと、とても楽しく鑑賞することができると思います。
とはいえ子供はすぐに飽きますよね。子供がその場に飽きてしまう前におすすめなのは、チラシを使っての「さがしものごっこ」です。
日本の展覧会には通常、展覧会ごとにとても美しいチラシが沢山存在します。
私は子供が2歳前くらいのとき、展覧会では、そのチラシを使って「どこにあるかなー?」とチラシに掲載されている作品を一緒に探すゲームをよくやっていました。作品を見つけたら「あったねー!」というのを繰り返す遊びを息子と続けていましたのです。紙媒体で見る作品と実際の三次元の作品との違いについては、息子自身、赤ちゃんの頃から「同じだけど何か違う」と認識していたようです。
美術館で言葉を話す子供と鑑賞する際は
ところで、私は日本近代絵画がとても好きです。ある日、私は子供と一緒に2008年1月に国立新美術館で開催された「没後50年 横山大観―新たなる伝説へ」を見に行きました。
横山大観といえば日本の近代絵画の歴史において代表的な人物です。屏風絵や大作はとても見応えがありましたが、私には1つとても気になる点がありました。それは「鑑賞者にご年配の方が多い」ということ。
当時はベビーカーで日本画の美術展に行くのはとても珍しいことでした。ベビーカーを気にする人からクレームが出てこないか。そこはとても気になる点です。そこで私は、「年配者のお客さんが多い」ことを意識して回ることにしました。
鑑賞者にお年を召した人が多い展覧会は、朝一番か閉館2時間前が比較的空いています。その時間帯を狙い、なおかつ鑑賞しているみなさんの雰囲気を見ながらのコース取りは欠かせません。なるべくトラブルを起こさないように、周囲を見渡しながら鑑賞することがとても重要だからです。
発した言葉はかけがえのない財産
なるべく穏やかそうな人が多そうな場所を縫うように鑑賞をしていた時、息子が「あ!」と声をあげました。そこにはとても美しい鹿が描かれた《秋色》がありました。「しかさん!しかさん!」と連呼する息子。確かに事前にチェックしていたチラシやWEBで見たかもなあ。。と思いながら私は気軽に「しかさんもぐもぐしてるねー」と言いながら一緒に見ていました。
そしてその展覧会の図録を買って帰りました。
家について食事の支度をしながら何気なく図録をソファの上に置いていたら、いつの間にか息子が図録を眺めていました。破ったらどうしよう!と慌てて図録に近づいたその時《秋色》のページを見て息子が「しかさんもぐもぐ!」と話してにっこり笑いました。
私は猛烈に驚きました。あの時、発した言葉を覚えているんだ。現物でも本でも芸術作品はちゃんと伝わるんだと。。チラシで見た作品、実際に観た作品、そして図録で見た作品がちゃんとシンクロするのだと。
そして鑑賞における「言葉」ってこんなにも胸に響くのか!と感動したのです。
子供と一緒にアートなお出かけを続けていくと「静かに見てくれるかな」→「作品を見てくれた」→「作品を見て○○してくれた!」→「作品について話してくれた」と、子供の反応が様々に変化するのがわかります。話し始めた子供との、発見に満ちた豊かな世界を思い切り楽しむために、少しだけ周囲に気を配ってみませんか。その変化は鑑賞体験の共有だけでなく体験を更にエキサイティングなものにしてくれるに違いありません。
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