写真家・アーティストの高松聡の新たな宇宙アートプロジェクト「WE」が始動

宇宙アートプロジェクト「WE」

宇宙アートプロジェクト「WE」

世界で初めて宇宙空間でのCM撮影を実現したことで知られる写真家・アーティストの高松聡氏が代表を務めるアートコレクティブ、株式会社 WEが実施する「宇宙アートプロジェクト『WE』」が始動します。

国家宇宙機関が行う宇宙プロジェクトではなく「私達の、私達による、私達のための宇宙プロジェクト」である本ミッションをWEと名付け、また本ミッションを推進するコミュニティの名称もWEとすることにしたとのこと。デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が本アートプロジェクトの推進プロフェッショナルパートナーおよびオフィシャルスポンサーとして、本プロジェクトの実現に向けたサポートを行います。

高松聡

ここで高松氏についてご紹介しましょう。 高松氏は1963年生まれ。筑波大学基礎工学類を卒業後、株式会社電通に入社。2005年クリエイティブエージェンシーGROUNDを設立し、代表取締役兼クリエイティブディレクターとして数多くのブランドを担当しました。カンヌ広告祭など国際広告賞で数多くのグランプリや金賞を受賞し、審査員、審査委員長を歴任。世界初のFIFA公 認パブリックビューイングを2002年国立競技場で実現。また世界初の宇宙ロケCMの撮影を2001年にポカリスエットで実現しました。2回目の宇宙ロケCMでは「反戦」をテーマ としたカップヌードル「NO BORDER」を、さらに「地球のサステナビリティ」「未来の管理社会」をテーマにしたカップヌードル「FREEDOM」などを手掛け、広告作品でありながら社会性の強いキャンペーンを提示し続けたことで知られています。2015年広告業界を離れ、 ロシア「星の街」で8カ月に及ぶ宇宙飛行士訓練を終了。株式会社SPACE FILMS代表、写真家・アーティストとして活動。2014年東京都現代美術館 「ミッション[宇宙×芸術]-コスモロジーを超えて」に出展。2020年個展「FAILURE」を開催。2024年アートコレクティブWEを設立しました。

WE

宇宙から地球を見ると「オーバービューエフェクト」と呼ばれる体験、マインドシフトが多くの宇宙飛行士に起きると言われています。その体験は様々ですが、多くの宇宙飛行士が薄い大気に守られた脆い地球を見ることで地球の環境問題、サステイナビリティの重要性を直感的に感じると言われています。また一つの惑星で国家間の戦争が続いている現実を宇宙から考え、戦争のない地球を強く希求するといいます。ですが、これまで宇宙に渡航した宇宙飛行士などの専門家や一部の富裕層など、人類全体でも600人程度のごく限られた人が体験できるものでした。 

宇宙に行かなくてもオーバービューエフェクトを起こすには限りなくリアルな「宇宙から地球を見る体験」を再現する必要があります。つまり人間の視覚能力の限界に挑戦する撮影と上映が必要です。それを実現するため本アートプロジェクトでは、撮影に複数台の高性能カメラをスタックして同時運用し、静止画3億画素、動画24K、VRではHMD(ヘッドマウントディスプレイ)で60PPD(PPD Pixel per degree 画角一度あたりのピクセル数)を超える360度動画再生を実現する撮影を行うとのこと。 さらに後処理でマシンラーニングさせたAI超解像を行い、出力としては静止画6億画素、動画48Kをターゲットとしているといいます。

WE代表の高松氏は2002年の日韓ワールドカップで世界初のFIFAパブリックビューイングを国立競技場で実現した経験から「非常に多くの人が見たいと思っている貴重なコンテンツは限定的な人数の方しか体験できない。そこで限りなくリアルなバーチャル体験を多くの方に提供することに大きな意味がある」と確信しました。今回のプロジェクトは「宇宙から地球を見る体験のパブリックビューイング」とも言えます。

また高松氏は、先にもご紹介した通り、世界初の宇宙ロケCMを2001年にポカリスエットで実現し、2005年には 日清カップヌードル「NO BOREDR」で平和を希求する2年間のキャンペーンを行いました。その国際宇宙ステーションでのCM撮影経験と、2015年にロシア「星の街」で8ヶ月間行った宇宙飛行士訓練、その後の写真家・アーティストとしての経験を統合して今回の宇宙プロジェクトWEを推進します。WEは2023年1月に米国ヒューストンのAxiom Space社と長期滞在宇宙飛行の座席予約契約を完了。 高松氏は第一回目のAxiom Spaceへの支払いを完了し、今後世界中の個人、 ブランド、財団等に協賛を依頼し必要経費のファンドレイジングを行います。

「WE」記者発表会にて

2024年2月8日に行われた記者発表会にて、高松氏は「私が宇宙に興味を持ったのが1969年、アポロ11号の月面着陸をテレビで見てからです。非常に心に残る出来事で、月に着陸しているアームストロング船長を見て、人類ってすごいな、科学ってすごいな、テクノロジーってすごいなと思い、将来宇宙飛行士になりたいと思いました。プロ野球選手なりたいとか宇宙飛行士になりたいってのはみんなが思って、どこかで忘れていくものですが、私の場合は22歳、大学4年生になるまでその夢を追いかけていました。

大学4年生のときに、現JAXA、旧NASDAの日本で初めての宇宙飛行士募集があり、やっと時代が追いついたと思い願書を取り寄せました。身長、体重、水泳、英語、理工系の大学を卒業している、一応全部クリアしているつもりで願書を取り寄せたのですが、裸眼視力が1.0以上、こういう項目がありました。私はド近視でして、当時レーシックも認められず、コンタクトも眼鏡も認められないということで宇宙飛行士への夢が22歳で潰えました。

ロシア「星の街」でロシア「星の街」での訓練の様子

2014年に広告業界を引退し、宇宙飛行士になりたいという6歳からの夢が忘れられずに、ロシアの「星の街」なら、ある方のバックアップクルーとして8ヶ月間訓練をするとなれるよということで、ロシアに8ヶ月間行って、宇宙飛行士訓練をコンプリートしました。

2015年にロシアに訓練に行ったときは、「宇宙飛行士になりたい」っていうだけで行ったんです。それ以外何もなかった。だけど星の街で毎日写真を撮っているうちに、写真家としての自分に目覚めていったんですね。宇宙飛行士という肩書きを取るためだけに頑張ることって何の意味もないな思ったのです。子供の頃からずっとやってきた写真が、私の新しい仕事になるだろうと思いました。宇宙飛行士になるってことより写真家・アーティストとして、宇宙で何ができるか、それこそが大事なんじゃないかと思うようになりました。

僕は人生観が変わるほどの写真って見たことがないんですね。でも宇宙に行って地球を見たら、真っ暗闇の中に青く輝く地球が浮かんでいて、それがゆっくりと回転している。その向こう側から太陽が昇ってきて、90分に1回日の出と日没があって、1日に15回、日の出と日没を繰り返す。その視覚体験が人生を変えるほどの影響を与えないわけがないと思うんです。おそらく全ての人が地球を宇宙から見たら、何か心が変わると思うんです。心のスイッチが入るっていうか。だとしたら、僕のなすべきミッションは、宇宙に行って、地球を見たときに得られる視覚体験を100%とは言わないまでも、限りなく近づけるような撮影をして、それを再現する再生装置を地上に設けて、世界中の人が宇宙に行かずとも、宇宙から見た地球を体験できる、そういう体験装置を作ることじゃないかなっていうふうに思ったんです。それが星の街で僕が見つけることのできた新しいミッションなんですね。宇宙飛行士になりたいっていう夢は僕だけの夢ですが、宇宙から見た地球を地上で見たいっていうのは、これは僕だけの夢じゃないと思うんです。

宇宙から地球を見る経験ができる人はほんの一握りで、そのほんの一握りを世界中の人が見られるように変えること、つまり宇宙から地球を見る体験の民主化に僕はすごく意義があると思っています。宇宙から地球を見たら、ほとんどの人がこの青い地球を守らなきゃって自然に思うはずで、本で読んだ知識ではなくて、サステナビリティの重要性を直感的に理解すると思うんです。この一つの星で国境をはさんで殺し合うとかありえないだろうとも思うだろうし、戦争がない地球になって欲しいと強く願うと思うんです。少なくともこの小さな星にみんな共生して生きてるんだっていう、地球人としての意識が芽生えるはずです」と語りました。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 執行役 Deputy CSIO パートナーの伊東真史氏は「 DTFA が本プロジェクトに参画するのは、このプロジェクトが持つ意義そのものに強く共感したからです。当社はこれまで様々な企業課題、社会課題の解決を支援してまいりましたが、近年その肥大化・複雑化を感じております。このような状況だからこそ、我々は強い意思を持って、「平和」や「サステナビリティ」を希求することが必要だと思っています。高松聡氏とのパートナーシップのもと、その意義に賛同いただける数多くの民間企業、学術機関、専門機関、個人の方々などと連携し、プロジェクトを実現させてまいります。平和を前提として我々の幸福を語り、サステナビリティを単なる地球環境の延命措置とせず、人類のサステナビリティと捉え、月や火星といった次の宇宙開発に向かっていく、そのような未来を皆で創り出していきます」と述べています。

 

以上、宇宙アートプロジェクト「WE」に関してご紹介しました。人生観が変わる体験ができるであろう本アートプロジェクトに、ぜひご注目いただけますと幸いです。

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