文化庁より「2023年芸術選奨」の新人賞に選ばれた、美術家・中﨑透による企画展「Ding-dong, ding-dong ~Bells ringing at the bottom of the valley~」
渋⾕スクランブルスクエアの14階・45階・46階・屋上に位置する展望施設「SHIBUYA SKY」は、「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」と題して、本格的な企画展を定期的に開催しています。「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」は、本施設の来場者に、渋⾕最⾼峰の景⾊を眺めるだけにとどまらず、まだ⾒ぬ世界への興味を抱かせ、想像⼒を育てる体験を提供することを⽬的に開催。「視点を拡げる」を共通テーマに、アーティストが本施設を体験したインスピレーションから制作された作品を展開しています。
SHIBUYA SKY ブランディングディレクターの有國恵介に、「SKY GALLERY EXHIBITION SERIES」の狙いを聞いたところ、「来場者が景色を眺めるその先に『新たな視点』を得るキッカケをつくること。そんな偶然の出会いによって少しでもアートや表現への興味の入口を作れればと思っています。本シリーズについては、作品や展示が『景色』と響き合う体験となるかどうか、展示スペースとしては過酷な環境を楽しいでもらえるかどうか、アーティストがSHIBUYA SKYでの体験から受けるインスピレーションをもとに展示を構成してもらえるかどうかを大切にしています」と述べています。
これまで第1回目は、写真家・⽯川直樹が⾃ら登り、撮影したエヴェレストの写真を SKY GALLERY の空間構成に沿って展⽰した「EVEREST 都市と極地の⾼みへ」、第5回目には、都市の運動から抜け出し「ただ、眺める」をテーマに、これ まで展⽰空間と観客を含めた状況をつくることで空間を変容させ、現実の不確かさを人々に体験させてきた現代アート チーム「⽬ [mé]」による企画展等が開催されてきました。
今回第7回目として、中﨑透による企画展「Ding-dong, ding-dong 〜Bells ringing at the bottom of the valley〜」を2024年3⽉31⽇まで開催中です。中﨑は昨年3月文化庁より芸術11部門において、優れた業績を上げた人物に対して贈られる「芸術選奨」の新人賞に選ばれた実力派。茨城県⽔⼾市を拠点とする美術家の中﨑透は、“⾔葉”と“イメージ”の「ズレ」をテーマにしたユニークな看板作品をはじめ、多くの⼈を巻き込みながらプロセス⾃体を作品化したプロジェクト型の作品など、活動が多岐にわたることで知られています。
中﨑はここ数年ほど、その⼟地・地域や建物に所縁ある⼈々を取材したインタビューを基点にし、紡いだ⾔葉とともに空間を構成したツアー型のインスタレーション作品のシリーズを全国各地で展開しています。
今回の展⽰において中﨑は、渋⾕という街に深く関わりながら独⾃の⼈⽣を歩む、年齢や性別、職業の全く異なる三⼈のインタビューを実施。決して交わり合う事の無かった三つの⼈⽣が、中﨑の新作を中⼼とした作品群と共に紡がれていきます。
中﨑は、本展覧会について「ベルボトムと呼ばれるズボンの型をご存知でしょうか? 妙な縁から、渋⾕で90年代からベルボトムの専⾨店をやっている店主と出会いました。 かつてのベトナム戦争の時代に、兵⼠が戦争への抵抗として、 ブーツからズボンの裾を出したスタイルが、 『鐘/ベル』の形をしていたことが発祥だという説があるとのこと。 それはアメリカにおいて『⾃由の鐘/Liberty bell』を連想させ、 ⾃由や平和、愛の象徴としてのファッションとして広まったと⾔われています。
今回、ベルボトム専⾨店の店主、渋⾕の都市開発に従事した男性、 現在、渋⾕の街を闊歩しつつテクノ⾳楽をこよなく愛する⼥性、 といった三⼈の⾔葉をモチーフに⼀つの物語を紡ぎました。 東京を、渋⾕を⼀望するようなこの場所から、 ⾜元から⼒強く鳴り続ける『⾕底の鐘の⾳』に⽿を澄ましてみます」と語っています。
また、年齢や性別、職業の全く異なる三⼈のインタビューを実施することで見えてきた世界について、「渋谷は個性的な人が多い。ステレオタイプなイメージだし、たった三人の話を聞いただけだけど、やっぱりそう思いました。それは奇抜な格好をしているとか、そういうことだけじゃなくて、自分が自分らしくあることを肯定してるのかもしれないし、もしかしたら自分は自分でしかあり得ないという諦めの境地なのかもしれません。でもそんな人たちに憧れて人は集まってくるし、渋谷という街はそれを許容する街でもあるんだなと思いました。
作品に登場してくる各エピソードは、渋谷にまつわるちょっとした例え話みたいなもので、この場所から眼下に広がる街の風景の中には無数の物語が溢れています。そんな物語を想像しつつ、時には自分たち自身の思い出や出来事や人生も混じり合って、鑑賞した人たちそれぞれの物語を楽しんでもらえるといいなと思っています」と語っています。
鑑賞者は この舞台に散りばめられた断⽚を通して、ここSHIBUYA SKYの上空から⾒下ろす街のイメージとのズレ、⾃らの今や⼈⽣との差異に触れながら、社会と一個⼈の間にある影響の密接さを感じることでしょう。再開発が続くこの街の輪郭は常に変化していきますが、その輪郭もまた揺さぶられる体験になるかもしれません。ぜひ会場に足を運んで、中﨑の展開する「Ding-dong, ding-dong 〜Bells ringing at the bottom of the valley〜」の世界感を体験してみてはいかがでしょうか。
■SKY GALLERY EXHIBITION SERIES vol.7「Ding-dong, ding-dong 〜Bells ringing at the bottom of the valley〜」
開催期間:2024年1⽉23⽇〜3⽉31⽇
開催場所:SHIBUYA SKY 46 階「SKY GALLERY」
参加⽅法:イベント当⽇の SHIBUYA SKY ⼊場チケット、もしくは年間パスポートをお持ちの⽅は、どなたでもご鑑賞いただけます。⼊場チケットの購⼊について、詳しくは下記サイトをご覧ください。
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