ストリートをテーマに、アートの変容や向かう先を考える「Study:大阪関西国際芸術祭 Vol.3」が開幕

野原邦彦作品《雲間》

「Study:大阪関西国際芸術祭 Vol.3」が開幕

2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機に、文化芸術経済活性化や社会問題の顕在化などといったソーシャルインパクトをテーマとした世界最大級のアートフェスティバル「大阪関西国際芸術祭(仮)」の開催を目指すにあたり、それらの実現可能性を検証する(Studyする)ためのプレイベント「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3 」が、2023年12月28日まで開催中です。

※大好評につき、船場エクセルビルでのプログラム「STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか」は2024年1月28日まで、ICHION CONTEMPORARY B2での「STREET 3.0:道を外した書」は1月31日まで、「Art Living」トーヨーキッチンスタイル大阪ショールーム会場(無料)は1月9日まで会期延長中です。

1月1日に発生した能登半島地震において、亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。また、被災された方々にお見舞い申し上げますと共に、一日も早い復興をお祈りしております。能登半島地震に関する甚大な被害状況の報道を鑑みて、私たちもアートを通じてなにか支援ができないかと考え、「STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか」及び「STREET 3.0:道を外した書」のご来場チケット代金の利益全額を、能登半島地震の支援のために寄付させていただきます。尚、寄付先は関係各所と相談をし、今後決定させていただきます。本支援活動へのご理解と、ご協力を宜しくお願い申し上げます。

能登半島地震支援「Study:チケット利益全額寄付」 (osaka-kansai.art)

第3回目となる今回は、ルクア イーレ、船場エクセルビル、中之島エリア、西成エリアなど大阪市内の16会場で企画展を展開し、5ヶ国から総勢70名以上のアーティストが参加。また、グランフロント大阪ではアートやクリエイティブな作品を購入できる「Study: アート&クリエイティブフェア」や、インテリアショップやショールームでの作品展示「アートリビング」、アートや日本が誇るクリエイティブの可能性を引き出すべくテーマ性を持ったビジネスコンテスト「StARTs UPs(スターツアップス)」、カンファレンスの開催など、アートを「みる」「買う」「学ぶ」といった多彩なプログラムも実施されています。

「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3 」のオーガナイザー株式会社ARTLOGUE代表取締役CEO、総合プロデューサーを務める鈴木大輔

 記者発表会において、本芸術祭のオーガナイザーである株式会社ARTLOGUEの代表取締役CEOで総合プロデューサーを務める鈴木大輔は「アート×ヒト×社会の関係をStudyする芸術祭と銘打っていますが、我々はこの関西大阪に芸術祭を立ち上げるにあたり、何が可能なのか、そして何をすべきなのかということを集合知型でStudyしていこうとしています。この芸術祭の一番特徴的なところは、アートイベントの中でアートフェア、つまり展示即売を行っている点です。日本はみる人は多いが買う人が極端に少ないという状況なので、やはりマーケットを育てていかないとアーティスト自身食べていけないので、これを行っています。

特に2025年はこの関西のみならず瀬戸内、愛知、岡山でも芸術祭が行われる予定の年なので、一体となって情報発信することにより、特に海外のお客様も呼び込めるのではないかと期待しています。最近万博は非常にネガティブな情報が出ておりますが、とはいえ万博の機会を我々としても何とか生かしていこうと思っています。万博は150カ国から2800万人が来場すると言われていますが、この方たちが『万博良かったね』で帰ってしまうとリピーターにならない、だからこそ『万博良かったけど、あの芸術祭も良かった』と思っていただき、リピーターになってもらおうと考えています。

また、国際芸術祭は外交の場にもなっています。例えば、マイアミで開催されているアート・バーゼルがもたらした経済効果は、年間4億から5億米ドルになると言われています。このようにアートの本丸が動くと、これだけ都市に及ぼす効果が大きいと。だからこそ2025年にしっかりと国内外の作家を招聘して芸術祭を立ち上げれば、国家元首クラスも万博を機に来ますし、各国のメディアも来ます。彼らに自国で発信してもらうことで、一気にグローバルに知ってもらえる、そういうチャンスになるだろうと思っています。万博をとにかく未来の加速装置として生かしていこうと思っており、2025年はゴールではなく、我々としてはまさにスタートラインとして考えています」と語りました。

山極壽一氏

大阪関西国際芸術祭 2025では、実行委員会会長に元京都大学総長で、総合地球環境学研究所所長の山極壽一氏、副会長にサントリーホールディングス副会長の鳥井信吾氏の内定が決定しています。

山極氏は「若い力、その芸術の力、アートの力を未来に繋げていくには、ベテランだけではなくて、様々な新しい試み、新しい活動をしてくれる若い世代の人たちを巻き込んでいかなければならない。これをぜひ大きなイベントに拡大して、世界を繋ぐということをぜひ皆さんに協力いただきながらやっていきたいと思いますので、ぜひ注目していただければと思います」と述べています。

沓名美和氏

今回、芸術祭とアートフェアを繋ぐテーマとして掲げられているのが、「STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか? 」。チーフ・フェアプログラム・ディレクターの沓名美和曰く、「このタイトルは、ストリートは何かという答えを出すものではないんですね。ストリートというものは、どのようなシーンがあって、そして今ストリートがどこにあるのかというようなところを、キュレーター、アーティストそして観客が一体となって探るというような構造になっています。なので、誰かが答えを出してここに提示するものではなくて、道は皆様で作っている。そういった展覧会になっています」。

それでは、次に各展示について、会場ごとに見ていきましょう。

1.船場エクセルビル

辰野株式会社が所有する、中船場に立地する1968年竣工のオフィスビル「船場エクセルビル」。解体が決まっている本ビルは第1回目から舞台になっており、本芸術祭で最も多いアーティストの作品が並んでいます。

「AP」の展示風景

ストリートとアートの関係を再考し、危機の時代におけるストリートを模索する「STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか」といったプログラムが展開されており、例えば2Fでは「AP」と題して、会田誠 / Algorithmic Perfumery / Etat Libre d'Orange / ZOOLOGIST / STORA SKUGGAN / 田村友一郎 / Disconoma(トマ・ヴォティエ + ファニー・ テルノ)/ トモトシ / NEANDERTAL / MOCAF / BYNAM / ⻑谷川愛 / FISHKOM / II / YAPのアートパフォーマリーを紹介する展示があります。

「AP」の展示風景

香りを「嗅ぐ」ではなく、「読む」といったアートパフォーマリーは、危機の時代に何をもたらすのか、キュレーターの緑川雄太郎は問うています。

「GRAFFITI IN OSAKA」の展示風景

ストリートを象徴するのが、3Fで展開されているVERYONEと®寫眞によるアーカイブ資料と作品を展示した「GRAFFITI IN OSAKA」。大阪には東京や他の都市とは異なるグラフィティの文化があります。日本のグラフィティカルチャーは2005年頃を境に衰退しているといいますが、その理由はテクノロジーの進化と街の有様の変化とのこと。芸術祭という公共のフェスティバルでグラフィティを展示すること、ビジネスエリアの船場を会場に選んだこと、その結果、実に多様な背景を持つ人々がグラフィティと接続すること—そのすべてが彼らの思い描くグラフィティの未来と軽やかにつながっているのかもしれません。

「Archive of Street」の展示風景「Archive of Street」の展示風景

5Fの関連展「Archive of Street」では、石谷岳寛 + Chim↑Pom from Smappa!Groupの展示が繰り広げられています。2022年に森美術館で開催された回顧展『ハッピースプリング』における『道』のドキュメント映像を石谷が手掛けています。合わせて、キタコレビル(2017)、国立台湾美術館(2017-18)での『道』の記録などを通して、彼らが築いてきた『道』の軌跡を辿ることが可能です。公道は私道と繋がっています。新たな私道は、危機の時代の公道をどのように変えるのでしょうか。

2.ICHION CONTEMPORARY B2

「道を外した書」展の外観

「道を外した書」は、ストリートとアートの関係を再考する展覧会として立ち上がった「STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか」と連携する展覧会。

「道を外した書」の展示風景「道を外した書」の展示風景

既存の領域を超え、具体美術と同時代の重要なアートとして国際的に認知されている井上有一と、彼に続きさらなる挑戦的な表現を模索する山本尚志、ハシグチリンタロウ、グウナカヤマ、日野公彦といった4名の現代書家を取り上げ、視覚表現として進化を続ける書道、その「道」がどこへ向かっているのか探ってみる展覧会です。

井上有一の書「夢」

例えば、井上有一の作品は「山」や「虎」といった、力強くも屹立した、大きな一字一字であり、大胆かつ独自の技術で書かれています。 彼の三千数百点にも及ぶ作品群は、戦後の日本現代美術界の一翼を担っており「東洋のジャクソン・ポロック」とも例えられるほど。 現在、彼の書は1950年代の「具体美術」「もの派」と並び、日本現代美術史を語る上で、避けては通れない革新的なムーブメントの一つであると評されています。彼による書は一見の価値ありです。

3.淀壁プロジェクト

淀壁プロジェクト

淀壁は、コロナ禍の2021年3月に淀川区役所のサポートのもと、医療従事者への敬意をテーマに、ナイチンゲールの肖像画を淀川区在住のアーティストBAKIBAKIが手掛けたことがきっかけに始まったプロジェクト。BAKIBAKIを中心に、国内外のアーティストが連携し、2025年の大阪万博に向けて壁画を通した地域活性化をテーマに淀川区十三エリアを中心に継続的な活動を行っています。

地域密着で拡大する淀壁プロジェクトを通じて、十三の街を歩き生の大阪を感じていただきたいと思います。また、東京やその他の都市とは異なるストリートのカルチャー、そしてアートの多様性を実感できることでしょう。

4.kioku手芸館「たんす」

kioku手芸館「たんす」の外観

本芸術祭では、アーティストのNISHINARI YOSHIOの今後の仮想課題として、後継者問題に焦点をあて、数年に渡るプログレスなプロジェクトを立ち上げています。

近年、活動拠点である大阪市⻄成地域に急速に増えつつある在日外国人。かつて日雇労働者の街として全国各地から労働者が集まり、その中で繁栄してきた同地域の商店街は、労働者の高齢化、不況による失業など時代の変遷のなかでシャッター街と化していましたが、ここ10年ほどで中国系・ベトナム系のカラオケ居酒屋や飲食店等が大量に入居しているそう。また、少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、技能実習生として来日する外国人も多く、⻄成区の居住者は増加傾向にあるといいます。

「NISHINARI YOSHIO」の展示風景「NISHINARI YOSHIO」の展示風景

ただ、同じ地域に生活する住⺠にも関わらず、旧住⺠とのつながりはなくその生活実態や背景を知る機会はほとんどないとのこと。そのような中で、彼・彼女らとの接点として「ファッション」はひとつの可能性があると考え、NISHINARI YOSHIOの服づくりワークショップを重ねることで、将来的にはブランドの共同制作者として活動を共にしていくことを目指しています。

5.ゲストハウスとカフェと庭 釜ヶ崎芸術大学

釜ヶ崎芸術大学の外観

大阪市西成区の通称「釜ヶ崎」と呼ばれる地域に位置し、あいりん地区とも呼ばれる日雇い労働者の街にある「釜ヶ崎芸術大学」。釜ヶ崎の変化は早く、亡くなる人も多く、労働者は減少し、外国人が増えているとのこと。

今回も本芸術祭に参加している釜ヶ崎芸術大学は、NPO法人「こえとことばとこころの部屋(ココルーム)」が主催。ココルームは釜ヶ崎で「喫茶店とゲストハウスのふり」をして場を開き、そこに舞い込んでくる課題や問いにさまざまな表現でアプローチを実施。「学びたい人が集まれば、そこが大学になる」として、街全体を大学に見立て、音楽や絵画、写真、詩など、さまざまなプログラムを展開しています。

釜ヶ崎芸術大学の「森村康昌の部屋」「会田誠の部屋構想」の展示風景

船場エクセルビルでは、「釜ヶ崎芸術大学の展示と繋がるような展示空間を」という会田誠の希望によって、船場エクセルビルにSTREET3.0 「釜ヶ崎芸術大学 会田誠の部屋構想 ーだから、私は愛したいー」が完成。釜ヶ崎芸術大学には、大阪在住の日本を代表する現代美術家・森村泰昌と鹿児島出身の労働者・坂下範正の出会いの部屋として、彼らの作品が一面に展示された一室があります。この通称「森村康昌の部屋」のように、もしも釜ヶ崎芸術大学に会田誠の部屋があったとしたら? というキュレーター・沓名美和のイマジネーションによって本展示空間は「会田誠の部屋構想」と名付けられています。

会田誠《梅干し》

この摩訶不思議な空間には《梅干し》という作品が展示されています。「STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか」という、ストリートとアートを考える展覧会の中の一作品として、なぜこの作品があるのか、その意味に思いをめぐらせて見て欲しい。

6.日の出湯はなれ こいさん路地 長屋

本展で、アジアのアーティストやキュレーター、そのほか芸術に関わるアジアの専門家ネットワークとして2021年に結成されたプロダクション・ゾミアが紹介するアーティストたちは、過去を探求し、現在へとつながるもう一つの道を示したり、見慣れた物事に複数の視点を与えることで、当たり前だと思っている認識に揺さぶりをかけます。それは現在における正しさや価値を覆すことではなく、個人の感性によって別の世界を作る方法であると考えます。

キム・ジェミニの作品《西成工場ラン》

例えば、キム・ジェミニは、近年アジアの国々における植民地以後の産業としての機械工場との貿易についてリサーチを重ね、作品を制作。本展では、現在の西成公園がある場所にかつて存在した​​大日本紡績株式会社に注目し、当時の街並みやそこで働いていた人々が見ていたであろう景色や息遣いを鑑賞者に想起させます。​

複雑な世界を生きることは決して容易ではありません。複雑さをありのまま受け入れ、多様な価値観としての個人の思いや眼差しで世界の豊かさを築くことも、私たちの想像力がなせる技でしょう。

7.大阪大学中之島センター5F いのち共感ひろば

「コズミック・エネルギー:宇宙の起源」展の様子

大阪大学 社会ソリューションイニシアティブと共に、国際宇宙ステーション(ISS)の外部に設置され、数カ月間宇宙を航行した野村康生の作品「ほしの姿観」を中心とした「コズミック・エネルギー:宇宙の起源」展を開催。

宇宙の真理とは、私たちの生きている現実とは一体どう成り立っているのか。この展示ではこの壮大な問いに、ニューヨーク在住のアーティスト野村康生、アーティストであり京都大学教授の土佐尚子、NY&シカゴを拠点とするニューメディア・アーティスト シュランパーの3名が、物理学、仏教思想、数理学など様々な視点から考察します。

「コズミック・エネルギー:宇宙の起源」展の様子

今回、世界初公開される宇宙アートの展示の舞台となる中ノ島センターは、野村がアーティスト活動を通して提唱する「PION理論」の元となる、湯川秀樹博士がノーベル物理学賞受賞のきっかけとなったπ中間子理論発見の場でもあります。

野村が掲げる「みんなで作るアート」の思想の元に結成されたプロジェクトチームPION UNITEDの一員としてSpacetainment社が手掛けた今回のPIONプレート宇宙プロジェクトは、米国フロリダNASAケネディ宇宙センターから3月半ば、SpaceX社のFalcon9ロケットによって国際宇宙ステーションきぼう実験棟へ送られて、船外暴露施設に設置されて約4ヶ月の宇宙周遊を終えて7月末に無事地球帰還という快挙を遂げたもので、元々のπ中間子理論をアートという形で実践に移し、それをこの場所で展示すること自体が原点回帰ともいえるでしょう。

8.アルフレックス大阪

「Art Living」の展示風景

御堂筋界隈4会場、徒歩圏内のインテリアショップ・ショールーム空間で、「アートのある暮らし」「アートとインテリアとの関係性を探る」プログラム「Art Living」。気鋭若手作家9名の現代アート作品とデザインコンシャスなインテリアのハーモニーを楽しむことができます。

「Art Living」の展示風景

例えば、アルフレックス大阪では、刺繍の平面作品や立体作品のインスタレーションなど白い布と黒い糸を使った作品を展開しているユ・ソラの作品をみることができます。

彼女は、大好きな自分の部屋の中を描いたことから何気ない日常の大切さに気づいたといいます。「当たり前のような日常はちょっとしたことでも崩れてしまう。災害、事故、コロナ禍、戦争、不安と恐怖が常に心の奥にあります。身近な所で世界で続く悲しいことに対して私ができること。今を生きている人たちが、日常の大切さに気づくような作品を作り発信し続けることなのではないかと気づきました。知らない人の似たような日常から平和と安堵感を共有したい。みんなの、そして自分の不安を少しでも和らげたい。そういう思いでどこの家にでもありそうな日常の姿や些細な経験を描こうとしていて、色のない、線だけで描かれた作品、鑑賞者それぞれ自分の日常を重ねて欲しい」と彼女は語っています。

9.ルクア イーレ

「拡張される音楽 Augmented Music」の展示風景。(左)佐久間洋司氏

「拡張される音楽 Augmented Music」は、インターネットが牽引する時代における新しいアートの価値を、インターネットカルチャーの側から追求しています。インターネット音楽の担い手たちが、心の在り所をテーマに、会場でしか体験できない一回性のある音楽をアートとして表現することで、アートをインターネットカルチャーにより拡張する試みです。エンターテインメントからアートへ、インターネットから芸術祭へ、コンセプトとリサーチ、クラフトを重ね合わせることで、音楽の影響力はアートまで拡張されます。本展を通して、新しい時代のアートの価値を提示しています。

たなか、椎乃味醂、はるまきごはん、フロクロ、sekai、x0o0x_など、人気ボカロプロデューサー4組6名によるプログラムです。また、会場エリアには本芸術祭のギフトショップを併設し、アーティストグッズやオリジナルグッズの販売も行っています。

「拡張される音楽 Augmented Music」の展示風景

2025年の大阪・関西万博では大阪パビリオンのディレクターを務め、「未来のバーチャルビーイング」の展示を統括する、キュレーターの佐久間洋司は「拡張される音楽ということで、その音楽というもののあり方、特にその中でもインターネットカルチャーを中心とした音楽がどのような形でアートに踏み入れることができるのかということをテーマにした作品を4点を今回展示しています。現代アートというものを考えたときに、こと私達若者に関して言ったときに、どれくらいそれに触れることができているかということを考えると、例えばアートのコミュニティ、マーケットで買われてオークションに出されて、その金額のような数で規定されるものについては、その閉じられたコミュニティに評価がされている可能性もなくはない。

あるいは学術的に評価するといっても批評があって、大学でアカデミックに評価をしなさいと新規性を競っていくと、そうしたときにそれですら、たくさんの若者がそれに触れているかというとそうではないんです。元々の原義的なアートの価値のひとつである行動変容を起こすことができているか、どんな影響力を社会に発揮できているかというと、現代アートは必ずしもまだ届いていない部分、あるいは忘れてしまった部分があるんじゃないかというのが問題提起されています。

それに対して、今回インターネットカルチャー、つまりエンターテイメントのど真ん中で、1人のユーザー、1人のクリエイターが、数百万人に自分の作った音楽がそのままに届くという、しかもクラフトを重視していて、リサーチやコンセプトではなくそのクラフトの良さだけで戦うようなその舞台は、ある種現代アートと対極にあって、その彼らの主体的な体験だけを届けているとこの対比がとても面白いと思ったときに、今、アートのアーティストの皆様のお力も借りながら、インターネットのクリエイターたちがアートの作り方で、こういった作品を作ってお届けする。それをこのルクア イーレのような商業施設の中で、たくさんの若者に届ける挑戦をしようということで、音楽からアートへの拡張、エンターテイメントからアートへ、インターネットから芸術祭へということで作品を知っていただきたい」と述べています。

次に、「Study:アート&クリエイティブフェア」についてご紹介します。

「Study:アート&クリエイティブフェア」の展示風景

1.Study:身に着ける芸術 コンテンポラリー・ジュエリー

「Study:身に着ける芸術 コンテンポラリー・ジュエリー」」の展示風景

本企画では、身に着ける芸術、コミュニケーションを生み出す装置としてのコンテンポラリー・ジュエリーを考察します。コンテンポラリージュエリーは、コンセプトを重視した、作家性の高いジュエリーです。素材やカタチに驚きや革新性があるだけでなく、コンセプトにおいても現代社会との接点を追求した作品があります。

国内外で開催する多様なプロジェクトを通して日本におけるジュエリー表現文化の活性化、発展、普及を目指し「芸術の歴史に残るムーブメントを起こす」ことを目標に掲げるアーティストの寺嶋孝佳と小嶋崇嗣らが主宰するCJSTにより、国際的に活躍する5名のコンテンポラリー・ジュエリー作家をセレクトしました。

Study:大阪関西国際芸術祭のプロデューサー、ディレクター、キュレーター、カンファレンス登壇者らに、実際にコンテンポラリー・ジュエリー身につけてもらう企画です。
 
作品は、ジュエリーなので、もちろん触ったり、購入することもできます。もし、素敵なコンテンポラリー・ジュエリーを身につけている人を見つけたら、そこから新しいコミュニケーションを始めてみてはいかがでしょうか。

2.gallry UG (ギャラリーユージー)/野原邦彦

gallry UGの展示風景

gallry UG (ギャラリーユージー)では、国内外で高い評価を得ている気鋭のアーティストである野原邦彦の作品が展示・販売されています。作品のモチーフとなる人物や動物は、自らが持つ空間や香り、雰囲気、感覚、時間を量塊として身に纏い、愛らしくユニークでありながらも、拡張された身体としての奇妙さとミスマッチさの間を行き来する不思議な魅力を放出しています。

2010年より海外でも個展やアートフェア、企画展に参加するなど意欲的に活動している野原。2017年上野の森美術館、2018年銀座 蔦屋書店 Ginza Atrium、2021年世界遺産二条城にて個展を開催しました。同年大丸松坂屋百貨店では、SDGs活動の一環として、「Think Green feat.野原邦彦」が全国の店舗を巡回。2023年9月には、ザ・リッツ・カールトン東京において特別展「Floating moment」が開催されるなど、今注目が集まっているアーティストです。

野原邦彦の作品《オムレツマント》

彼の作品は、ルクア イーレ2Fの2カ所にも登場しています。《オムレツマント》はエントランス横に設置される本芸術祭の「インフォメーションカウンター」に設置、巨大バルーン作品《雲間》は2F吹抜の空間に浮かんでいますので、ぜひこちらもチェックしてみてください。

 

以上、「Study:大阪関西国際芸術祭 Vol.3」についてご紹介しました。2025年に本開催となる「大阪関西国際芸術祭(仮)」の価値最大化をはかるためStudyされている本芸術祭にぜひ足を運んで、大阪がアートを起爆剤として活性化する目撃者となっていただけますと幸いです。

 

 ■Study:大阪関西国際芸術祭  vol.3 

会期:2023年12月23日(土)~12月28日(木)

会場:ルクア イーレ、船場エクセルビル、中之島エリア、西成エリアなど大阪市内各所

■アート & クリエイティブフェア

会期:12月23日(土)11:00~19:00、12月24日(日)11:00~16:00

会場:グランフロント大阪北館B2F コングレコンベンションセンター

チケット:当日券

※全会場(展覧会・アート&クリエイティブフェア)に開催期間中、何度でもご入場頂けます。

一般:3,000円

高校・大学・専門学生:2,000円 ※要学生証の提示

中学生以下無料

障がい者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護者1名 無料

主 催:株式会社アートローグ、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁

Study:大阪関西国際芸術祭|大阪府・関西 (osaka-kansai.art)

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