ジャパノラマ Japanorama: 1970 年以降の新しい日本のアート展 ARTLOGUE 編集部 ARTLOGUE 編集部    更新日: 2017.11.14

EXHIBITION / 展覧会

ジャパノラマ Japanorama: 1970 年以降の新しい日本のアート展

ポンピドゥ・センター・メス Centre Pompidou-Metz| 2017.10.20(金) 〜 2018.3.5(月)

  • 普通

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概要

Kenji YANOBE, Atom Suit Project – Desert C-prints, 49,8 x 49,8 cm Collection particulière
© Kenji Yanobe © photo : Seiji Toyonaga

ポンピドゥ・センター・メッスにて日本の視覚文化を紹介するJapanorama展を開催

 

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、ポンピドゥ・センター・メッスとの共催により、本年10月より「ジャパノラマ Japanorama 1970年以降の新しい日本のアート [new vision on arts in Japan since1970]」を開催します。 大阪万博が開催された1970年以降の日本の現代美術、視覚文化を概観的に俯瞰することを目的とした本展は、キュレーターに東京都現代美術館参事・長谷川祐子氏をお迎えし、約100人・組の作家による350点あまりの作品を紹介する大規模な展覧会です。 2018年の日仏友好160周年、また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、メッスにおけるジャパンシーズンの一環として日本の社会や文化への関心を喚起します。

 

開催趣旨


1986年、ポンピドゥ・センター(パリ)で開催された「前衛芸術の日本 1910-1970  Le Japon des avant-gardes 1910- 1970」展では、ヨーロッパの前衛芸術から影響を受けてきた日本のモダニズム表現が概観された。2017年にメッス分館で開催される本展は、これに続くものとして、1970年代から現在までを対象とする。1970年は大阪万博の開催年であり、日本はモダニズムのひとつの頂点を迎えていた。コンセプチュアルなアート作品を制作する現代作家が世界各地から多数参加した「人間と物質」展が東京で開催されたのも同年である。それは、第二次世界大戦後に築かれた戦後体制から日本が脱却しようとする移行期の始まりだった。欧米の文化的影響からの独立である。「戦後」の解放期、現実肯定的な熱い表現主義や、反芸術のアクションの時代が終わり、現実を否定あるいは相対化する流れは内面化し、70年代の還元主義につながった。アートで言えば、物質を還元する「もの派」と概念を還元する「日本概念派」が活躍し、欧米の影響を遮断して自己文化の形成を目指した。

日本が東京を中心とするポストモダンの未来的な文化国家として世界の地図に浮上したのは1980年代である。「バブル」と呼ばれた経済的繁栄、消費文化との強い関係のもとで、サブカルチャー、アート、アカデミックな思想が、文化という名のもとに同一のレベルで相互交流し、表層的で記号的な戯れを特徴とする、フローする文化が生まれた。1979 年 YMO 結成とテクノポップの興隆、1981 年川久保玲がパリ・コレクションにおいてもたらした黒の衝撃。「脱構築」や「リミックス」という方法をとりながら、圧倒的な個性で立ち上がった1980年代において、 YMO や川久保は弁証法的な進化を遂げつつ、可愛らしさと「ポスト・ヒューマン」という意味での非人間的な身体、デジタル的な非身体性、アジアと西洋を、記号的に差異化によって融合した。その手法は、戦後を引きずっていた身体性と感情の澱を浄化し、リセットするものであり、そこに新しさがあった。80年代の文化はある意味で、自己を他者との差異によって顕示する自意識過剰な時代の産物といえる。

1990年代に入り、バブルの崩壊と不況は、明日の見えない不安定さ、曖昧な空気をつくりだし、若者たちは記号化されえないストレートなリアルを模索し始める。一方でそれは、「無意識の過剰」ともいえるほどにフラットな個人をつくりだした。不安定さ、あいまいさは、生のあやうさ、はかなさと希望があいまって、透明感やフラジャイルな形態の表現として現れる。90年代前半に登場した、ホンマタカシによる郊外を写した一連の写真、あるいは、妹島和世による従来の文法を逸脱した建築などは、人々に意味やプログラムの決定を委ねるという点で革新的なものであった。当時「ネオポップ」と呼ばれた、村上隆らによるポップカルチャーのイメージの流用は、スペクタクル的であり、かつ、強い言説性を持ち、環境問題や政治社会状況の変化、混沌からくる心理的な不安、影を反映している。

90年代後半は、95年に起きた阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件を経て、人々が「大きな政治や社会」への懐疑を抱き始め、相互扶助的な「小さなコミュニケーション」をより重視するようになった時代である。アートにおいては、より個人的で日常性に根ざしたささやかな表現がつくりだされるようになる。個人の感情や自意識を、即興やアマチュアリズムの精神や手法で表現することをとおして、コミュニケーションの媒介となる象徴や想像力の領域を再生させようとする試みが多数見られた。各人が、個人または小さなコミュニティのレベルで、社会にコミットしていくポリティクス。大きな変化や改革を求めるのではなく、主体と客体、内と外のやわらかで自由な越境をとおして、目の前の可能性を探っていく方向性は、2010年代の現在も続いている。この方向性は、私的写真、セルフ・ドキュメンタリーに代表される映像、プログラム建築、ナラティヴを内包したファッションなど、あらゆる表現ジャンルに共通している。2011年に起こった「3.11」、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を経て、アートをはじめとするさまざまな創造活動において、社会的なコミットメントの度合いは増大している。

本展は、複数のパラメーターの交錯を可視化し、時系列に沿ってではなくテーマに沿って、6つの島──「A: 奇妙なオブジェクト/身体─ポスト・ヒューマン」「B: ポップ・アート─1980年代以前/以後」「C: 協働/参加性/共有」「D: 抵抗のポリティクス─ポエティクス」「E: 浮遊する主体性/私的ドキュメンタリー」「F: 物質の関係性/ミニマリズム」──アーキペラゴーを有機的につなげるユニークな構成となる。モダニズムの文脈に則り国家的文化として形成をなしえた建築、デザインに対して、現代アートは、包括的な理論や言説に貫かれることなく、さまざまな文化や出来事、現実の状況と関係を持ちながら混沌としたまま展開してきた。その中心になるのが、個人の自意識のあり方と、現実環境に敏感に反応していく身体性、身体性と結びついている知や知覚の生産である。一貫した言説が形成されえなかったゆえに、多くのユニークな表現が生まれえたということもできる。これは日本の現代アート、視覚カルチャーを再考し、新たなトランスレーションを試みる展覧会である。

Exhibition 「ジャパノラマ:1970年以降のアートの新しいヴィジョン」展開幕 | 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻ウェブサイト: http://ga.geidai.ac.jp/2017/11/01/japanorama/ より引用

 

■美術展概要

 

【展覧会名】 ジャパノラマ Japanorama: 1970 年以降の新しい日本のアート展
【日 時】 2017 年10 月20 日(金曜日)~2018 年3 月5 日(月曜日)
【開館時間】 10 月31 日まで:月曜日・水曜日・木曜日 10 時~18 時 /金曜日~日曜日 10 時~19 時 火曜日休み 11 月1 日以降:水曜日~月曜日 10 時~18 時 火曜日休み
【会場】 ポンピドゥ・センター・メッス(フランス、メッス市)
【主催】 国際交流基金、ポンピドゥ・センター・メッス
【特別助成】 公益財団法人石橋財団
【協力】 全日本空輸株式会社
【キュレーター】 長谷川祐子(東京都現代美術館参事)
【展示デザイン】 妹島和世(SANAA)
【参加作家】 会田誠、赤瀬川原平、石原友明、伊藤存、榎倉康二、大竹伸朗、小谷元彦、樫木知子、木村恒久、 草間彌生、工藤哲巳、古賀春江、小清水漸、さわひらき、塩見允枝子、嶋本昭三、菅木志雄、高山登、 立石大河亞、田中敦子、Chim↑Pom、できやよい、照屋勇賢、中川幸夫、中園孔二、中西夏之、 中原浩大、中村宏、奈良美智、野村仁、福島秀子、町田久美、村上隆、村上友晴、 森万里子、 山川冬樹、横尾忠則 ほかを予定(順不同)
【ウェブサイト】 http://www.centrepompidou-metz.fr/en/japanorama-new-vision-art-1970

 

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