自然と人間の関係性について提示する平子雄一の個展「FOOTPRINTS」

自然と人間の関係性について提示する平子雄一の個展「FOOTPRINTS」

アーティスト 平子雄一氏(1982年生まれ)をご存じでしょうか? 平子氏は、2006年にロンドン芸術大学(University of the Arts London)の中のカレッジの一つであるウィンブルドン・カレッジ・オブ・アート(Wimbledon College of Art)のファインアート ペインティング(Fine Art, Painting)学科を卒業し、植物や自然と人間の共存について、またその関係性の中に浮上する曖昧さや疑問をテーマに制作を行っていることで知られています。観葉植物や街路樹、公園に植えられた植物など、人によってコントロールされた植物を「自然」と定義することへの違和感をきっかけに、現代社会における自然と人間との境界線を作品制作を通して追求しています。

平子氏の表現手法は広範囲にわたり、ペインティングを中心に、ドローイングや彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど、多様なアート活動を展開しています。デンマーク、オランダ、シンガポール、台湾、韓国など、国外でも精力的に作品を発表。SBIアートオークションに出品した作品《Lost in Thought 5》が27,600,000円で落札されるなど、その人気は日本だけにとどまらず、海外コレクターからも注目を集めています。

そんな実力派アーティスト 平子氏の世界感が体感できる個展「FOOTPRINTS」が、6月25日(土)まで、東京・六本木にあるアートギャラリー「KOTARO NUKAGA」にて開催中です。足跡を意味する本展覧会のタイトルは、「自然」の周りに集団で集まる人々によってつけられた無数の足跡からインスピレーションを受け、集団をイメージするものとして名付けられたもの。本展において平子氏は、自身の代表的なモチーフが集団を作るインスタレーション群を提示します。

FOOTPRINTS
例えば、青いにんじんや赤いニンニクなどは、人間により品種改良された本来の自然界には存在し得ない食物を表現しています。

また、ファンの間では「樹人間」とも言われる、平面作品でも登場するモチーフは、個体ごとに異なり、それらはその姿に共通する存在感のある「足」を持ち、「FOOTPRINTS」を想起させます。
FOOTPRINTS
 
近代以降、世界を変化させることで私たち人類は価値を生み出してきました。現在、私たちは人類の活動が地質や生態系にまで影響を及ぼす「アントロポセン(人新世)」という時代を生きていると言われています。かつては畏敬の念をもって向き合っていた自然と人間の関係は今や大きく変わってしまっており、「手つかずの自然」などと呼んで、絶景と称える風景にさえ、人類の及ぼす影響は確実に迫っています。

現在の世界の説明のできない状況は、私たちが世界をわかった気になっていただけなのかもしれないという現実を突きつけるものでした。コロナの状況により、観光地など規制が入ったことで人が立ち入らなくなり(踏み入らなくなり)、環境が改善されて蘇った自然もあれば、立ち入らなくなり人の手が入らなくなった(踏み入らなくなった)ことで維持ができなくなった自然もあります。本当に「手つかずの自然」なんてあるのでしょうか? 多くの人が「自然」という概念を共有、理解した時、その思考はどこへ向かうのでしょうか? その事実より着想を得た本展で、平子氏は改めて自然と人間の関係性について、私たちに考える機会を与えてくれます。

ぜひ会場に足を運んで、平子氏の世界感を体感してみてはいかがでしょうか?

■「FOOTPRINTS」
会期:2022年5月21日(土)-6月25日(土)
開廊時間:11:00-18:00(火-土)※日月祝休廊
会場:KOTARO NUKAGA(六本木)
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
アクセス:東京メトロ日比谷線、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3番出口より徒歩約3分

KOTARO NUKAGA
 

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