アートで浮遊散歩。
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2017
― 雅とモダンと春陽より ―

アートで浮遊散歩。<br>KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2017 <br>― 雅とモダンと春陽より ―

KYOTOGRAPHIE 2017でメイプルソープのオリジナルプリントが見られる、と期待を胸に出かけました。何年ぶりの再会でしょう。実は1988年、ニューヨークで、偶然、メイプルソープの回顧展に出会ったのです。人に連れられ、写真家の名前も知らなかった若年の私に、それはそれはショックでした。いえ、ショックだったかどうかさえわかりません。感情が真っ白になったまま、美術館をあとにしたような記憶があるのです。彼の写真を、どんな言葉で言い表せるでしょう。突き詰めて、突き詰めて、突き詰めてたどりつく美。色をそぎ落としたモノクロ写真で、なお引き立つ造形。あの写真を見てしまったときの気持ちを思い出せるだろうか……と、思いながら会場となっている誉田源兵衛へ向かいました。説明できないまま置き去りにした、あのまっ白な感情に出会いたいからです。

 

MEMENTO MORIロバートメイプルソープ 写真展 ピーターマリーノコレクション presented by CHANEL NEXUS HALL  誉田屋源兵衛 竹院の間  室町通三条下ル

MEMENTO MORI
ロバート・メイプルソープ 写真展
ピーターマリーノコレクション
presented by CHANEL NEXUS HALL
誉田屋源兵衛 竹院の間

 

誉田源兵衛は京都室町にある創業280年の帯匠。メイプルソープと老舗。
京都ならでは組み合わせです。静かに分け入ってみれば、メイプルソープにしかない世界がそこにありました。 向かい合うチューリップの花弁を眺め、進むと、日本では公開されにくかったヌード写真が壁の裏側から現れてきました。奥に進むほど秘密のベールがめくられてゆきます。妖しい雅を誘う会場構成です。

 

Robert Mapplethorpe, Tulip, 1984 © Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

Robert Mapplethorpe, Tulip, 1984
© Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

 

30年の月日を経ても、まっ白な感情が染まることはありませんでした。この写真は不思議です。アートとか芸術とか、枠にはまらない、表現のもっと手前にある、プリミティブな生の心が語られています。それが私にとってのメイプルソープ。再会に感謝です。

今年のKYOTOGRAPHIEには、魅入ってしまう写真が揃っています。15ヶ所あるメイン会場も(16番目のagnès bは4月26日(水)から)、それぞれが京都ならではの環境で展示されています。二条城の御台所はそのひとつ。土間にアンディ・ウォーホルのBMW、上がった板敷きの間には、独特のフレーミングによる肖像写真家アーノルド・ニューマンが並んでいます。

 

アーノルド・ニューマン「マスタークラス-ポートレートの巨匠-」<br />presented by BMW<br /> 特別展示:BMW アート・カー by アンディ・ウォ−ホル<br /> 二条城 二の丸御殿台所・東南隅櫓

Arnold Newman | アーノルド・ニューマン
「マスタークラス-ポートレートの巨匠-」
presented by BMW
特別展示:BMW アート・カー by アンディ・ウォ−ホル
二条城 二の丸御殿台所・東南隅櫓

 

アーノルド・ニューマンは構図の匠と呼びたいほど、グラフィックデザインとしての完成度が高く、感心しきりでした。

 

アーノルド・ニューマン「ロベール・ドアノー、写真家」ニューヨーク、1981年 Arnold Newman, Robert Doisneau, photographer, New York, 1981 © 1981 Arnold Newman / Getty Images

アーノルド・ニューマン「ロベール・ドアノー、写真家」ニューヨーク、1981年
Arnold Newman, Robert Doisneau, photographer, New York, 1981
© 1981 Arnold Newman / Getty Images

 

建仁寺はアラーキーこと荒木経惟。お座敷の畳に、ちゃぶ台的な展示。
庭からの光をやわらかく受けながら、妖しく楽しい魅力を放っています。

 

荒木経惟「机上の愛」 建仁寺両足院

荒木経惟「机上の愛」
建仁寺両足院

 

 

巨匠たちの銀塩プリントはアナログ時代を象徴する芸術ですが、新しいテクノロジーを使った作品も登場しています。 見事な再現力を見せるのは、フランスで発見された約3万6千年前のショーヴェ洞窟の壁画写真です。大規模な4K超高画質モニターは、圧倒的な存在感ですが、観客はパウダービーズのクッションに寝転ぶことで、浮遊感覚を味わいながら鑑賞できます。

 

Raphaël Dallaporta | ラファエル・ダラポルタ<br> 「ショーヴェ洞窟」<br /> 共催:京都新聞<br /> 京都文化博物館 別館1階

Raphaël Dallaporta | ラファエル・ダラポルタ
「ショーヴェ洞窟」
共催:京都新聞
京都文化博物館 別館1階

 

山城知佳子| Chikako Yamashiro <br>「土の唄」<br /> 堀川御池ギャラリー

山城知佳子| Chikako Yamashiro
「土の唄」
堀川御池ギャラリー

 

立命館大学は紛争地での記録です。報道写真は芸術の分野ではないのかもしれませが、目をそむけることができない圧倒的な事実の前に、安易な創作は吹き飛んでしまいます。

 

DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展 立命館大学国際 平和ミュージアム

DAYS JAPAN フォトジャーナリズム写真展
立命館大学国際 平和ミュージアム

 

春の京都は、一年でいちばん観光客が多い時期です。 地下鉄バスの一日乗車券がありますが、写真展と共に名所観光したいですよね。ただ注意が必要です。特に金・銀・清(金閣寺、銀閣寺、清水寺)は、バス停に長蛇の列。タクシーでも渋滞。そこで、自転車はどうですか? KYOTOGRAPHIE会場の端と端(立命館大学と建仁寺)でも、距離は7km程度。一日走り回って走行距離10Kmくらいです。スポンサーのBMWが自転車を無料で貸し出しているので、元新風館に駐輪してあれば(戻ってきていれば)その場で借りられます。ただし高性能(過ぎる)な自転車で、ママチャリとは全然違うので、慣れるまではご用心ください。ゆっくり走りましょう。

KYOTOGRAPHIEメインの展示とともに、サテライトイベントのKG+も回ってみました。 関連イベントを含めて52カ所で開催。個性的な場所も多数ありますので、見逃さないようにしましょう。黄色い旗が目印です。今年の「KG+2017AWARD GRANDPRIX」グランプリには森田具海「2つの川」が選ばれました。森田具海さんは来年、KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2018への出展が決定し、さらなる新しい表現を見せてくれると思います。

森田具海「2つの川」 熊本県水俣市袋

森田具海「2つの川」 熊本県水俣市袋

 

森田具海「2つの川」 栃木県栃木市藤岡町内野

森田具海「2つの川」 栃木県栃木市藤岡町内野

 

KG+は黄色い旗が目印

KG+は黄色い旗が目印

 

藪乃理子の作品には常に「生命力」というキーワードが内在しています。
自身を撮った艶めかしい作風とはちょっと違う雰囲気のご本人です。

藪乃理子さん

藪乃理子さん

 

藪乃理子展「風葬」

藪乃理子展「風葬」

 

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二条城の夜。桜とプロジェクションマッピング

二条城の夜。桜とプロジェクションマッピング

 

ザネレ・ムホリ「黒き雄ライオン、万歳」 FORUM KYOTO 木屋町四条上ル鍋屋町

Zanele Muholi | ザネレ・ムホリ
「Somnyama Ngonyama | 黒き雌ライオン、万歳」
FORUM KYOTO

 

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017

会 場:二条城二の丸御殿台所・東南隅櫓、両足院、誉田屋源兵衛 竹院の間 ほか
会 期:2017年4月15日(土)~5月14日(日)
パスポート一般:3,000円、学生:2,000円
プログラム:
・フランス国立ギメ東洋美術館・写真コレクション「Theater of Love」
・ーノルド・ニューマン「マスタークラス -ポートレートの巨匠- presented by BMW 特別展示:BMW アート・カー by
アンディ・ウォ-ホル」
・「MEMENTO MORI ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノ コレクション presented by CHANEL NEXUS HALL」
・荒木経惟「机上の愛 supported by shu uemura」ほか計16のメインプログラム
主 催:一般社団法人KYOTOGRAPHIE
共 催:京都市,京都市教育委員会


2017年のテーマ  LOVE 
“写真は人生との愛の戯れ”

私たちが「愛」と呼ぶ感覚や概念は、宗教観、歴史観、地域性、生活環境など、個々のバックグラウンドによりそれぞれ異なります。しかしその差異や軋轢が、時に愛を憎悪へと反転させ、時に無関心という愛の大きな欠如となり、社会的弱者へのいわれのない暴力など、現代社会が抱える深刻な事態へと発展することもあります。だからこそ人類は、愛がいかに偉大で不可欠なものであるかを知り、いわば本能的に多種多様な愛を求めてしまうのかもしれません。
私たちは「愛する」ことは、自分以外の存在を認め、つながることだと考えます。愛することによって、他者とつながり、社会とつながり、自然とつながり、芸術とつながり、そして自分とつながる。そうしていけば、いつか世界は平和になると信じています。
写真を通じて「愛」を共有すること、これが私たちのフェスティバルで実現させたい変わらぬ夢です。
KYOTOGRAPHIE 共同創設者/共同代表 ルシール・レイボーズ & 仲西 祐介

URL:http://www.kyotographie.jp

 

京都は小さな都。自転車でスイスイ回れます。

京都は小さな都。自転車でスイスイ回れます。

 

 

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