アフリカ・ニューウェーヴ:ファッションセンスが光るアフリカ発のアートプロジェクト

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© Hassan Hajjaj

最後の未開拓の巨大マーケットとして、欧州や中国を含む世界のビジネス界から注目されているアフリカ大陸。奴隷貿易による移民は、ブルース、ジャズ、R&B、ソウル、レゲエ、ヒップホップという音楽ジャンルを生み出し、ポピュラーミュージックの歴史を更新してきました。「アフリカン・カルチャーの今」をキャッチアップして、来るべき新しいアートの潮流を探ってみたいと思います。

今回は、ファッションを作品に採り入れたアフリカ出身のアーティストたちをご紹介。

被写体のエネルギーを引き出すハッサン・ハジャジ


ロンドン在住のハッサン・ハジャジ(Hassan Hajjaj)は、ファッションデザイナー、フォトグラファー、現代美術アーティスト、フィルムメーカーという多彩なタレントを持つモロッコ出身の人物。13歳の時にイギリスに移住し様々な職を転々とした後、1984年にロンドンでストリートウェア・ブランド「R.A.P」を起ち上げます。

1996年にブランドをクローズさせた後は、友人や知り合いの無名のクリエイティブな人々をキャッチーにスタイリングして撮影した、ファッション・ポートレート・アートの制作を始めます。空き缶、空き瓶、食品パッケージやタイヤなどを使った、キッチュな額縁でフレームされたミクストメディアのウォーホル風の作品は、欧米で大きな注目を集めました。アフリカの伝統衣装と西洋のマテリアルをポップなセンスでミックスさせたハジャジのアートには、被写体となった人々のエネルギーとライヴな息づかいが封じ込められています。

ハジャジはロンドンとマラケシュに自身のショップを持ち、Reebokとコラボレーションしてユニセックスのスニーカーをデザインしたり、2016年には「R.A.P」を復活させるなどファッション分野でも積極的に活動中。2017年には、日本の三越伊勢丹グループのクリスマスキャンペーン、「MAKE it HAPPY!」 のポスターの撮影も担当しています。



リローンチされたファッション・ブランド「R.A.P」のアイテム
リローンチされたファッション・ブランド「R.A.P」のアイテム


フレッド・マーティンズのメッセージアート


1988年生まれのナイジェリアのビジュアルアーティスト、フレッド・マーティンズ(Fred Martins)は、地球温暖化を含め、人、動物、自然への社会的な関心を喚起する作品シリーズで知られています。大学では医学を学んだというマーティンズは、コマーシャルなデザインワークを時々休んでは、メッセージ性の強いビジュアルアートに取り組んでいます。

90年代前半の西アフリカのハイライフ・ミュージックを聴いたことで、音楽とカルチャーについて考え出したというマーティンズは、自由と社会正義のためのアフリカの闘争の歴史をテーマに据えます。アフロ櫛をモチーフに、黒人運動家やプロテストミュージシャンの横顔を表現するシリーズ「Orange, Black and Freedom」では、刑務所をイメージした鮮やかなオレンジを背景に、黒いマット調の櫛のシルエットが強いコントラストをなして、グラフィカルにアクティビストの肖像を描いています。


アフロ櫛は1970年代に、アフリカ系アメリカ人のアフロヘアの若者たちが、抑圧への抗議のファッションアイコンとして着用したもの。エジプトで5,500年前のアフロ櫛が発見されたことで、非常に長い歴史を持つことが証明されました。

和とアフリカの出会い。「WAFRICA」が生み出す新しい美


「WAFRICA」は、カメルーン出身でフランス・パリで育ったデザイナー、セルジュ・ムアンゲ(Serge Mouangue)が起ち上げた、日本の「和」とアフリカの伝統カルチャーの対話から生み出される新しい美を追求するプロジェクト。自動車メーカーのコンセプトカーのデザインのために日本に滞在していたムアンゲは、2007年に西アフリカのテキスタイルを使った着物を京都の老舗呉服メーカー小田章と協力して製作しました。

 

© WAFRICA
© WAFRICA

「WAFRICA」の着物の素材は、シルクではなく、アフリカの衣装に一般的に使われるワックスプリントされたコットン布を使用。身体のラインを隠す伝統的な着物から、個性を強調するファッションにシフトした着物は、着る人を抑制された所作から解放して、自由な新しい着こなしを可能としています。



「WAFRICA」のプロジェクトは、「アフリカと日本の美の融合ではなく、2つの異なるカルチャーが交わることで生み出される『第三の美』を追求している」と語るムアンゲ。

カメルーンのバミレケ族の彫像を日本の伝統的な漆塗りで仕上げたシリーズ「The Blood Brothers」は、ニューヨークの「ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン(Museum of Arts and Design, MAD) 」で展示され好評のもとに販売されました。

© WAFRICA
© WAFRICA


2017年のカンヌ映画祭では、スペインの女優、ビクトリア・アブリル(Victoria Abril)が「WAFRICA」の着物でレッドカーペットに現れ、SNSで注目を集めました。