二項対立的な思考に陥るのではなく、「えーっと」という空白のスペースに立ち止まることが重要。「えーっと えーっと」をキーワードに展開する 「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024」
2010年より毎年開催している京都発の国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」。国内外の「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、 芸術表現と社会を、新しい形の対話でつなぐことを目指しています。 演劇、ダンス、音楽、美術、デザインなど、ジャンルを横断した実験的な表現が集まり、 そこから生まれる創造、体験、思考を通じて、舞台芸術の新たな可能性をひらいていきます。
フェスティバルは、「Kansai Studies(リサーチプログラム)」、「Shows(上演プログラム)」、「Super Knowledge for the Future [SKF]( エクスチェンジプログラム)」といった3つのプログラムから構成されます。例えば、「Kansai Studies(リサーチプログラム)」は、京都発の国際フェスティバルとして、自分たちが立脚する「地域」について自覚的に捉え、フィールドワークを通して探求するプログラム。アーティストが中心となり、地域住民やプロデューサー、研究者と一緒に、京都や関西の文化を継続的にリサーチしていきます。活動を通じて生まれた思考の軌跡やプロセスは特設ウェブサイトに蓄積され、誰もがアクセスできるオンライン図書館として公開。未来のクリエイターや企画のためのナレッジベースや実験場、アイデアソースとなることを目指します。
「Shows(上演プログラム)」は、世界各地から先鋭的なアーティストを迎え、いま注目すべき舞台芸術作品を上演するプログラム。京都および関西における舞台芸術の変遷と動向に注目しながら、ダンス、演劇、音楽、美術といったジャンルを越境した実験的作品を紹介します。
そして、「Super Knowledge for the Future [SKF]( エクスチェンジプログラム)」は、とりわけ実験的な舞台芸術作品と社会を対話やワークショップを通してつなぎ、新たな思考や対話、フレッシュな問題提起など、未来への視点を獲得していくプログラムです。実験的表現が映し出す社会課題や問題をともに考え、議論し、現代社会に必要な智恵や知識を深めていきます。ここで獲得できるスーパー知識 (ナレッジ)は、予測不能な未来にしなやかに立ち向かうための拠り所となるはずです。
2024年7月18日 (木)に開催された、「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024」記者会見において、KYOTO EXPERIMENT共同ディレクターの川崎陽子氏から、次のようなフェスティバルの概要説明がありました。
「2010年から始まったKYOTO EXPERIMENTでは、国内外の演劇、ダンス、音楽、美術など、ジャンルを横断した実験的な舞台芸術を創造、発信し、芸術表現を通して、社会に新しい形の対話を生み出すことを目指しています。今回のフェスティバルが15回目となります。
今年はプログラムから思考を生み出すきっかけとして、キーワードに「えーっと えーっと」という言葉を設定しています。今回「Shows」で紹介する多くの作品には、土地と人々の結びつきから生まれる芸能や文化とその検証、あるいは再構築、近代から現代における歴史の中の環境と人の関係性、政治史と個人史、国の記憶やその伝承など、様々な歴史、記憶やそれらを思い出す行為を見出すことができます。そうしたことをディレクターチームで話し合う中で、「えーっと」という言葉にたどり着きました。
何か思い出そうとするとき、私達は「えーっと」と言いながら、断片的な記憶を寄せ集めて言葉にすることが多いのではないでしょうか? それは空白を埋める言葉であり、何かを考えたり、探しているときの言葉でもあります。他者との間を埋めながら、記憶と対話を繋いでいくための言葉でもあるかもしれません。
毎日のように、ウクライナへのロシアの軍事侵攻や、パレスチナでの人道危機についてのニュースが流れ、選挙があれば、極右政権が支持を得るというのは珍しいことではありません。
このような時代において、私達はフェスティバルという場を通して、何ができるのだろうかということを考える中で、「えーっと」という言葉に行きつきました。何かを白と黒に分ける二項対立的な思考に陥るのではなく、「えーっと」という空白のスペースに立ち止まること、思考を再構成すること、過去との対話から明日を作っていくということをキーワードとして、フェスティバルのプログラムを通して皆さんと考えたいと思います」。
また、記者会見に登壇されたアーティストの穴迫信一氏(劇作家・演出家・俳優)と捩子ぴじん氏(ダンサー・振付家)は、Shows(上演プログラム)に参加。穴迫信一×捩子ぴじん with テンテンコとして、「スタンドバイミー」を上演します。
北九州でブルーエゴナクを旗揚げし、現在は京都と東京も拠点に加えるなど、国内で縦横に活動を広げている劇作家・演出家の穴迫信一氏。麿赤兒氏率いる大駱駝艦で活動を開始し、その後自身のソロダンスや振付作品を発表すると共に、様々なアーティストと共同作業を行ってきたダンサー・振付家の捩子ぴじん氏。THEATRE E9 KYOTOのアソシエイトアーティストを務めた経験もある2人が、初めての共同演出に臨みます。今作では、両者がかねてから関心を寄せていた死生観をテーマとし、「自らとの関係が保留されている(現在の、あるいは 100年後の)死者の前に立つことができるか」の問いをもとに、穴迫氏が戯曲を書き下ろします。音楽性の高いリリカルな穴迫氏の言葉に、 捩子氏の身体性はどのように介入していくのでしょうか。音楽は、アイドルグループBiSで活動後、ソロプロジェクトを展開するエレクトロニクスミュージシャン・DJのテンテンコしが担います。死者同士の対話は、生者の現実以上にその風景をリアルタイムに生起させるかもしれません。そこから観客が見出す、死と生と、 そして現在とは、一体どのようなものなのでしょうか。
最後に、松井孝治京都市長のからのメッセージをご紹介します。
「国内外で活躍する新進気鋭のアーティストが京都に集う舞台芸術の祭典「KYOTO EXPERIMENT」は今回、記念すべき15 回目となります。芸術表現の最先端を走り続ける壮大な実験(EXPERIMENT)がこうして今年も開催できることを心から嬉しく思います。開催に御尽力いただいた山本麻友美実行委員長をはじめ、すべての関係者の皆様に深く敬意と感謝の意を表します。
本年のテーマは「えーっと えーっと」。私たちが何かを考えたり、記憶を思い出したりするときになじみの深い言葉です。 豊かな歴史と文化を有するここ京都は、過去、現在、未来が交錯する場所。アーティストの研ぎ澄まされた感性で紡ぎ出され る京都ならではの表現に期待が高まるばかりです。御来場の皆様は、今ここだけの作品との出会いを心ゆくまでお楽しみくだ さい。
本市としても、「古きをいつくしみ、新たな世を切り拓く」との方針で、伝統を大切に、多才な人々が集い、文化を支える強い経済の復活やさまざまな社会課題の解決につなげる。そして「突き抜ける魅力のある文化首都・京都」の実現に全力で取り組んでまいります。変わらぬ御支援と御協力をお願い申し上げます」。
以上、京都発の国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」についてご紹介しました。今や日本でも数少ないチャレンジングな国際舞台芸術祭として、世界中の芸術関係者から熱視線が注がれている「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」に、ぜひご注目ください。
■KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024
会期:2024年10月5日(土)~10月27日(日)
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO、ほか
主催:京都国際舞台芸術祭実行委員会
[京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化
一般社団法人KYOTO EXPERIMENT
ダンスプログラム共同主催: ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
あなたのデスクトップにアートのインスピレーションを
ARTS WALLは、常にアートからの知的な刺激を受けたい方や、最新のアートに接したい方に、ARTLOGUEのコラムや、美術館やギャラリーで今まさに開催中の展覧会から厳選したアート作品を毎日、壁紙として届けます。 壁紙は、アプリ経由で自動で更新。