涼しげ写真満載!北欧ノルウェー、スノヘッタの建築美 Vol.1 「ランドスケープと持続可能性」
ヨーロッパ初の水中レストラン「Under」のデザインは、さながら海に沈みゆく巨大なモノリス(一枚岩)のよう。 © Snøhetta
ノルウェーのオスロに本拠を置く国際的な建築事務所スノヘッタ(Snøhetta)。ランドスケープと建築を融合した持続可能なデザインで、多くのコンペを勝ち抜き世界的な建築プロジェクトを手がけています。北欧を代表するこの建築事務所の、自然とランドスケープ、ヒトとコトにアプローチする作品のいくつかを2回に分けて見ていきます。1回目は、スノヘッタの「ランドスケープと持続可能性」にフォーカス。
■〈ムンクのコラボ企画も話題に。北欧ノルウェー、スノヘッタの建築美 Vol.2 「ヒトとコトのデザイン」〉はこちら
沈没するモノリス?ヨーロッパ初の水中レストラン「Under」
ノルウェーの山の名前から名付けられたスノヘッタの建築には、山の稜線のような斜めの構造が取り入れられているものが少なくありません。スノヘッタのロゴも山をモチーフにしていますが、この斜めのデザインが彼らの一つのアイデンティティとなっているようです。
現在建築が進められている、2019年オープン予定のヨーロッパ初の水中レストラン「Under」の建築デザインも、巨大なモノリス(一枚岩)が斜めに海中に突き刺さっているような外観。徐々に沈没していっているような錯覚を覚えて、ドキドキします。「Under」のネーミングは、「wonder=驚き」とのダブルミーニングになっていて、訪れる人たちに海洋の驚異と神秘の体験を提供します。
レストランには80〜100席のシートが用意され、暗く落とされた照明の下、11 x 4mのアクリル製の窓から青の洞窟のようなパノラマビューに浸ることができます。「Under」は海洋生物のリサーチセンターとしても機能。モノリスのような構造体は人工的な岩礁となり、時とともにムール貝が表面にびっしりと貼り付いて、建築物は自然とコラボレーションしながら変化していくのです。
ノルウェー野生トナカイセンターパビリオン
「ノルウェー野生トナカイセンターパビリオン」は、「野生トナカイ基金」のチャリティーによって建築された、自然観察のための教育センターです。スノヘッタ山のあるドブレ山地は、最後の野生トナカイの群れが暮らす地域であり、ジャコウウシなどの希少動物や植物が生育する護るべき貴重な土地です。
野生トナカイセンターパビリオンは、国立公園となっているスノヘッタ山のビューポイントに、環境への負荷を最小限に抑えながら設置されています。来場者たちは、1.5kmの徒歩ハイキングでパビリオンにアクセスします。ビューポイントで撮影された写真を元にしたタイムラプス動画をご覧ください。
■Snøhetta Viewpoint 4K
90平米の建造物には、鉄とガラスでできたミニマルな箱の中に、風や水の自然の力で侵食された岩や氷河のような有機的な形の巨大な木造インテリアが鎮座しています。これはコンピューターで設計されたモデルをもとに、ノルウェーの船大工が加工したパイン材を組み合わせて造られたもの。
吊り下げられた薪ストーブの形状も、SFチックでユニーク。ノルウェーを訪れたらぜひ行ってみたいです。
ノルウェー国立オペラ&バレエ劇場
ノルウェー国立オペラ&バレエ劇場は、2008年にバルセロナの世界建築フェスティバルで文化賞を受賞、2009年にEUの優れた現代建築に与えられるミース・ファン・デル・ローエ賞を受賞した、スノヘッタの代表作の一つ。氷山の形をした斜めのラインが特徴的なデザインで、冬季以外は訪問者は無料で屋根のスロープの上を歩くことができます。
館内のインテリアは木材を大胆かつ繊細に使った、北欧デザインの見本のような空間。入館するだけで気持ちが晴れるような清々しさです。
トイレを目隠ししている壁のデザインも、アート作品のような美しさ。テクノロジーと心理学的アプローチを融合させたスノヘッタのバックグラウンドが垣間見えます。
強烈なインパクトを与えるファサードとインテリア
こちらリレハンメル美術館の凝固した液体金属のようなファサードは、ノルウェーの彫刻家 ボード ・ブレイヴィク(Bård Breivik, 1948〜2016)によるもの。約25cmの奥行きのレリーフを持つステンレススチールがピカピカに研磨されて使われています。
キング・アブドゥルアズィーズ・センター (The King Abdulaziz Center for World Culture)は、10年もの歳月をかけて2017年に完成したサウジアラビアの総合カルチャーセンター。宇宙人が造った基地の遺跡のよう。繭のようにも見えるテクチャーが、ファサードに生き物感を与えています。
スワロフスキー・クリスタルワールドは、年間60万人が訪れるオーストリアの観光名所。スノヘッタは3つの建築事務所による改修・拡張プロジェクトに参加し、子供のためのプレイタワーとプレイグラウンド、ショップエントランス、カフェ・レストランエリアを担当しました。
タイムトンネルのようなショップエントランスは、数キロメートルに及ぶスパイラル状のファイバーが光輝き、インタラクティブに反応するサウンドエフェクトが来場者の期待感を盛り上げます。
国際コンペで勝利を勝ち取った仏紙ル・モンドの本社ビルも2019年に完成予定です。国民の融合をテーマに取り入れた建築となっています。
ノルウェー・オスロやニューヨークを始めとして、世界各国に事務所を構えるスノヘッタは、北欧という枠組みを超えた国際的な建築・ランドスケープ設計事務所となっています。有機的で柔軟なインターナショナルなチーム編成で、先進テクノロジーや新素材、綿密に計算された心理学的アプローチを巧みに組み合わせるスケール感のあるクリエイティブ。進化を続けるスノヘッタのバックボーンには、北欧の地で培われた、自然や風景への畏怖の念が深く根を張っていることを感じます。
次回は、スノヘッタの「ヒトとコトのデザイン」に注目してお届けします。
■〈ムンクのコラボ企画も話題に。北欧ノルウェー、スノヘッタの建築美 Vol.2 「ヒトとコトのデザイン」〉はこちら
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